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駈歩アニメ ゆったりとした駈歩は馬の姿も優美で、上下にドスンドスンされる速歩よりも乗り心地は柔らかい。これを見れば、自分でも乗って走ってみたくなるし、実際快適な乗り心地にハマるだろう。けれども大手の乗馬クラブなどでは、最初のうちは駈歩をやらせてくれないなど時間的・金銭的ハードルを設けているのは残念なこと。

 「駈歩」に相当する英語「canter」は、イギリスのカンタベリー(Canterbury)に向かう巡礼者が馬をゆっくりと走らせていたということが語源らしいから、canter はゆっくりとした走りが理想的。「lope」という英語も駈歩を意味するが、厳密には違うという解説があるが、何度見ても違いが判らない。この解説でも「多くのライダーが同じだと思っている」と言っている。

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裸馬で駈歩 駈歩はタ、タ、タン  タ、タ、タンという3拍子の肢運び。人がスキップで進むときのように、左右どちらかの肢が常に前方に着地する(出ている:leadする)という左右の肢が非対称に動く肢運びをする。

 左右どちらの肢が前に出ているかを「手前」という言葉で表す。左手前というのは左肢が右肢よりも前方に着地する肢運びで、このときの左肢のことを「手前肢」と呼ぶ。

 この図は左手前の駈歩の肢運び。
 前肢の手前肢と、後肢の手前肢が両方とも同じ左側になるように走るから、着地の順を示す緑の矢印が、この図のように交差する「交差歩法」である。

 襲歩だと②で、左後肢が着地してから、その後右前肢を着地させて、この間で歩幅を稼ぐけれども、駈歩では、左後肢と右前肢はほぼ同時に着地する。
 ③から①に戻るときには、どの肢も地面についてない空中浮揚期があるが、ごくゆったりした駈歩では空中浮揚期がない。駈歩なんだから空中浮揚期は無くてはだめだろうと思ったりするが、オリンピック選手の演技でも空中浮揚期がなかったりする。


 左手前の駈歩では、左肢が右肢よりいつも前に出ているから、進行方向と馬体の向きは一致せず左斜め前に進むから、進行方向の真正面から見ると馬の左側が見える。
 反対に、馬の右側が見えるなら右手前の駈歩をしていることになる。

 駈歩は片側の肢に負担を掛ける歩様だから、ながく同じ手前で走っていると、片側の肢だけが疲れる。そこで、適当なタイミングで手前を換えてやる必要がある。競馬でも、最後の追い込みのときにはそれまでと手前を換えることで脚力がぐんと伸びるらしい。競馬の騎手には直線を走っている最中に手前を換えさせる技量も必要。

 正しくない肢運びに、cross firing lope あるいは disunited canter というものがある。
たとえば最初に左後肢が着地して、次に右後肢と右前肢が同時に着地、次に左前肢が着地して、左前肢で踏み切って空中浮揚期( suspension )という順の回転歩法(肢運びの順を示す矢印が交差せず、ぐるりと一周する肢運び)。これは馬にとってよくないので、もしこの脚運びになったらいったん止めて、再度駈歩を始めさせるのが良い。どうしてこういう脚運びをするのかは説明がない。このビデオでも馬の自由意思で脚運びを変えているように見える。

flying change をするときは瞬間的に回転歩法が現れる。


 この絵は右手前駈歩での一完歩の歩幅(水色の矢印)を示したもの。

 後肢の歩幅は一番狭く(青の太線)、前肢の歩幅は広い(黄色の太線)が、緑の太線よりも長くない。この緑の太線の長さは、右後肢と左前肢がほぼ同時に着地するので、それほど長くならない。

 空中に浮揚している区間(赤の太線)の幅は歩様の収縮・伸長度合いによって大きく違う。やや速い駈歩では左前肢の踏み跡のやや前方に着地(左の絵の赤線の長さは短い)。

 ゆったりした駈歩では赤線の長さはずっと短くなり、黄色い線側に折り返されて、左後肢は左前肢の踏み跡の前でなく、そのやや後方に着地する。


 下の絵は左手前の駈歩。

①右の後肢が着地。

馬体は沈み込みを始める。





②左後肢と右前肢が同時に着地。

騎乗者の体も沈み込み、浮いていた尻は鞍に着く。

沈み込みに合わせて脹脛で馬体の圧迫開始。
実際の圧迫は③の段階で行う。
騎乗者の前後位置は、最も後ろ寄りになるので拳が馬体に対して静定していると、拳は腰からやや遠い位置に置かれることになる。


③左前肢が着地。

騎乗者の腰は鞍の前方へ押し出される。
このとき体を空中へ跳ね上げられないようにするつもりで脹脛による圧迫はグッと強める脚扶助により、後肢の踏み込みを促す。
馬の胴体の一番横幅の広いところよりも下の馬腹を脹ら脛下部で下から抱え上げるようにすると、馬が背を丸めて後肢を踏み込むようになって良いらしい。

拳は、腰が前にスライドするに応じて、腰近くに引きつけるようにして、拳の馬に対する相対位置が変わらないようにする。


④四肢とも空中に浮く。(空中浮揚期)

馬体が起き上がり、鞍の前橋が持ち上がる。

騎乗者の尻も鞍から離れるから、体が鞍から大きく浮き上がらないように、脹脛の締め付け継続。
馬体が降下し始め、後肢が着地したら脚による馬体の圧迫は止める。


 非常にゆったりとした駈歩というのが傍から見てなかなか恰好が良いが、どんどん前にすっ飛んでゆくような駈歩になることがある。どうも馬の背にドスドス不快感を与えたり、乗り方が悪いと、ゆったり駈けてはくれないらしい。
 「ゆったりとした駈歩は乗り心地がとてもよい」ということは馬も気持ちよく走っているからこそだろうから、馬が不快を感じては気持ちよくゆったり走らないということらしい。
 きちんとハミ受けさせられると、ゆったり走ってくれて、乗り心地は格段に柔らかく、良くなる。


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 このアニメは右手前駈歩での馬体の動き。
 反撞は速歩よりもゆったりしている(速歩での上下動が一完歩に2回なのに対して駈歩では一完歩に1回)。

 反憧の高さは、上下動の非常に少ない馬から、大きく上下に動く馬までいろいろ。
 一般的には、馬がゆっくり走れば前後の動きは小さく、上下動が大きくなる。馬の速さが増すと、上下動は少なくなり前後動が主となる。普通の駈歩では重心の上下動はおよそ10cm、競馬のレース速度(襲歩)では、わずか4cmほどだという。

尻が弾む駈歩

 上手い人の駈歩は尻が鞍からほとんど離れない。
 しかし、普通に駈歩の1,2,3、1,2,3のリズムに乗っているだけだと、このムービーのように尻が跳ね上げられて、鞍の上に尻餅をついて、馬の背に衝撃を与えてしまう。
 これでは馬は背をへこませてしまい、背を持ち上げて体を柔らかくつかう滑らかな駈歩をしてくれない。結果、ますますドスンドスン跳ね上げられる駈歩になってしまう。


 このアニメは、鞍の動きと尻の動きを多少誇張したもので、尻が鞍に衝突するタイミングは、人により多少違いがあるけれど、尻が鞍と餅つきする人はだいたい、こんな動きになっている。
 こんな風に跳ね上げられる原因は、①②③、①②③、①②③、の3拍子のリズムで最後の③で腰がグッと前に押し出されたときに、騎座で鞍を前に押し出すように(随伴せねばとばかりに、腰を漕ぐ癖のある人は特に)したままでいると、③のあと前肢が持ち上がり空中浮揚期に入るときに、鞍の前橋が大きく持ち上がるので、前橋近くに押し出されている尻が、空中に放り上げられてしまうことにある。

 そのため、①で反手前の後肢が着地したときには、まだ尻は空中にあり、②で鞍がほぼ最低の高さで前に移動始めたころに鞍に尻が着地する。このあと、後肢の蹴り出しで馬の尻が持ち上がり馬体が加速されるときに、乗り手の腰もこの力で前に押し出されて、腰が前橋近くに押し出された③の状態になる。

 極端に言えば、馬の加速で尻が鞍の前橋に押し出され、空中浮揚期のために前肢を浮かせる力で前橋から跳ね上げられ、跳ね上げられた尻が鞍の後方に尻餅、の繰り返しのイメージ。

 これを防ぐためには、体幹はしっかり堅く固めて、関節、特に股関節、の柔軟性で馬の動きを吸収せよという。けれども、体幹を固めると関節も固まってしまい、関節をうまくショックアブソーバーとして使うことができない。

 こちらのWebサイトでは、従来の1,2,、1,2,のリズムで3を強調して腰を前に押し出して随伴するのは間違いだと言っている。そうではなくて、むしろ、,2,3の1に着目して、馬の後肢が着地したタイミングを強調して乗るべきだと説明している。いち、に、さ~ん、と3で腰を押し出しっぱなしにするのでなくて、いちっ、に、さん、と1で尻をしっかり馬の後肢に乗せる意識をすべきだという。このWebの4:40当たりからは一見の価値があると思う。ただし、このWebの解説者は「3」を強調して乗るのは馬の前肢に負担を掛け馬を加速してしまうからダメだと言っており、尻が跳ねないための乗り方として解説している訳ではない。けれどもいろいろな上手い人の乗り方をよく見ていると、いち、に、さーんと3でのんびり浮揚感を楽しんだりしていない。3で腰が前に出ている時間はみな短く、すぐに1の位置に腰を戻しているように見える。

 さて、このWebの解説のやり方は、どうなんだろうか?しばらく意識して練習してみよう。


 CRによれば、「駈歩では乗り手を乗せる仕事をするのは馬であって、人ではない、乗り手の仕事は馬が人を乗せて走るのを邪魔しないこと」だと言う。鞍の上で腰を振って漕いだり、じたばたするなということ。鞍(馬体)の動きで自然に脚や騎座が動くに任せるのが大事。太腿の前部を十分下に落して、膝を下げて柔らかく、股関節は馬の動きで開閉するままにする。股関節が自由に動くということが駈歩を安定して乗るための必須要件だという。


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 「駈歩がうまくいきません」「駈歩発進ができません」というのは、乗馬の悩みベストテンに必ず入っている。いろいろな乗馬サイトのFAQはこうした悩みであふれている。

 たしかに最小限の扶助でスッと駈歩をだすのは難しいことがある。というか、駈歩をさせるのが難しい馬というのはいる。「走らずに済むなら、走りたくない」と思っている馬を走らせるのは難しい。こういう馬は、だいたいは、「走りたくないな~」と思っていたところへ、駈歩をしろといわれたけれど、走らずにごねていたら、乗り手が走らすのをあきらめたので走らずに済んだ、というような経験が積み重なって、走らない馬になっていることが多い。初心者がこんな「走らない馬」を相手に駈歩の練習をするのは効率が悪い

 他方、よく調教された素直な馬は初心者が乗っても、スッと駈歩発進をしてくれる。だから、どうしても走ってくれないんだけど、というようなことに悩むよりも、ちゃんと走ってくれる馬を用意してくれるクラブで習う方が上達が早いただ、走る馬の上でバランスをとれるとか、腕がぐらぐらしないとか、ある程度馬の動きに身体がなれていないと、せっかく走り出した馬を、手綱にしがみついて止めたりして、走らない馬にしてしまう恐れがある
 
 走らない馬を割り当てられて、どうしても走って欲しいなら、常歩や速歩で充分脚扶助で推進して、これは前に行かなければダメなんだなあと馬に思わせておく必要がある。速歩もパッカ、パッカというような遅いリズムではだめで、パパパパという速いリズムでどんどん走らせて、特に後肢が充分な力をもって動いている状態にまで前進気勢を高めておけば、駈歩も出やすくなる。そして速歩とは違うと感じさせる強い駈歩の扶助を使う。ダメなときは、扶助を使ってすぐに鞭を使う。最初は軽く、それでダメならやや強めに、それでもダメならより強く使う。このとき、走りたくない馬は、「何をするんだっ」と尻ッパネをしたりするかもしれないから、慌てたりせず、しっかり騎座に重みを掛けて毅然と乗っていることが大事。ここで乗り手がオタオタすると、馬に「ん、これはもうちょい尻ッパネすれば、鞭も使われず、走らずにも済むかも知れない」と思われてしまう。

 こちらには、駈歩発進のコツについて非常に分かり易い解説がある。この人の解説は多岐にわたっているが、どれも非常に丁寧で素人にも分かり易い。

・駈歩の発進

 駈歩発進をさせる前に、充分に推進して、しっかりした前進気勢を作っておくことが大切。これができていない状態では、素直に駈け足発進することは難しい。そして、上体をしっかりと立て(馬上で背伸びし)て、体重はやや後ろに掛け気味にして、手綱で馬に内方姿勢をとらせて、内方脚、あるいは、後方に引いた外方脚で、馬腹を軽打。

脚による扶助

 内方脚をやや前に(階段を一段降りるつもりで膝をやや前方に下げる)、外方脚を大きめに引いて、内方脚で強く方脚で馬腹を圧迫。(外方脚の圧迫を使え、という教本もある)
 それでもダメなら尻に鞭。

手綱による扶助
 内方手綱を控えて馬の顔をやや内方へ向ける。
 外方手綱も緊張を保つ。
 脚を使って馬がぐっと前に出ようとする動きを手綱で受け止め、前にでる力が溜まった感じになったところで、手綱を譲る。

 けれども、「お願いだから走って」とばかり手綱をやたら緩めてはいけない。M先生はこれを「行って、行っての手綱になってますよ」と言う。絶対に「行って、行って」になってはダメだと。
 手綱を譲って駆け出させると、ドドドっと制御の効かないような駈歩を始めてしまいやすい、そうなってから手綱を控えてもなかなかゆったりした歩様になってくれない。駈歩の前の常歩・速歩で充分前進気勢を作っておいて、駈歩発進のときも手綱はしっかり張って常歩・速歩の時のコンタクトのまま脚の圧迫を強めて駈歩発進すると、制御の効いた乗り心地のよい駈歩をさせることができる。「お願いだから、走って」と手綱を緩めてはいけないらしい。

 左回転あるいは左に曲がるときは遠心力に対抗するために左手前で駈歩をすることが自然で、左に曲がる隅角などで駈歩発進すれば、だいたいは左手前の駈歩を始めてくれるが、正しく手前を合わせて発進することが難しい馬もいる。左回転なのに右手前で走ることを「反対駈歩」といって、反対駈足で小回りをすると、歩様がぎくしゃくして異様な反撞を感じる。

 だから、「馬が駈けだした」というだけでは駈歩発進ができたとは言えない。意図したとおりの手前で発進してくれて初めて駈歩発進が出来たといえる。隅角を利用したり、輪乗りで回転していることを利用して、その方向の手前で走らすのは、最初の練習としては良いが、駈歩発進の技術習得のためには、たとえば馬場の中央直進状態から、直線運動をしたまま思い通りの手前で駈歩発進ができるように練習しなければいけない。

 このためには、正しい扶助をすればスッと駈歩がでるような軽い馬で練習する必要があるように思うし、そういう馬で練習すれば駈歩発進の習得も早いと思う。しかし初心のうちは、多少鞭でも入れなければ走らないような鈍い馬をあてがわれがちなのが残念。

 ところで、右手前で発進するために左脚を後ろに引いて圧迫という発進のやり方だが、なぜこうしなければいけないか?という理由はどんな教本を読んでもピンとこない。「右手前駈歩の第一歩となる左後肢を踏み込ませて体重を支えさせなければならないから、左脚を使って左後肢の踏み込を指示するのだ」というのがかろうじて、そういうものかと思わせられる説明。
 これをこちらのビデオではとても分かり易く説明している。 つまり左脚を引いて使うことで馬の尻を右横へ誘導、馬の尻が右へ誘導されると必然的に右斜横歩の要領で右手前になる。ただし、左脚で尻を右へ誘導したとき馬が左に回らないように(尻が右へ行って、前肢がそのままだと馬は左を向く)手綱で馬の首を右へ向けておく。まあ、こんな文章を読むより絵を見た方がずっと納得できる。

 駈歩をさせるためには前肢が浮き上がらなければいけない、このため手綱を控えて前方に壁を作って馬が前方に出ようとする勢いを前肢を持ち上げる力に変換するのだという解説がある。手綱を控えるというのは、そういう役割も持っているのだろう。ただ、駈歩発進のためには、脚による推進が一番肝心だと思える。

 なれないうちは駈歩で発進せずに、速歩で走り始めることが多々ある。こうなってからもっと強く脚を使っても速歩のスピードが上がるだけで、駈歩に移行しない。これは馬が駈歩の指示だと感じていないから。徐々に圧迫を強めると、馬は現在の速歩のスピードアップを求められていると感じてしまうことがある。これまでと違う歩様に変えなければいけないんだよと判らせるためには、それまでの延長ではない、段差のある強い扶助を行うようにする。自動車で言うと、アクセルを徐々に踏み込むのではなくて、はっきりとギアチェンジをするイメージが良いという。

 それでもうまく行かないときは、一旦馬を止めて 最初からやり直す。何度やり直しても駈歩が出ないときは鞭を使って出す。ただし、「脚による扶助なしで鞭」でなく、駈歩の扶助をやって(それでも出ないときに)鞭を使う。駈歩の扶助に従って走らなければ鞭を使われるという順を馬に理解させることが必要。そうすれば鞭なし、脚の扶助だけで走ってくれるようになる。

・駈歩の継続

 前進気勢を強めたい時、あるいは、速度が落ちた時は半減却を使ってから、脚で馬腹を圧迫する。馬体が沈んで次に体が跳ねあげられる寸前から両脹脛で馬体をギュッと絞める。体が降下するときには緩める。
 速度を落とすときは、半減脚を使ってから、やや手綱を控える。

 同じ速さを継続する場合は、馬が前進気勢をもって走っているなら、脚による扶助は不要。脚でぐいぐいやらずとも、馬の動きを邪魔しない乗り方をしていれば、脚による扶助を送り続けなくても気持ちよく駈歩を継続してくれる
 
 駈歩が続かないという問題はだいたいが以下のようなことに原因がある場合が多い

手綱を引っ張る
 駈歩が続かない原因のナンバーワン。
 ・駈歩に慣れないときは、駈けだした瞬間慣性で上体が後ろに引っ張られ体勢が崩れる。このとき、手綱も後ろに引っ張ってしまい、せっかく走り出した馬を止めてしまう。
 ・多少駈歩が続けられるようになってからは、馬の動きで上体が振られて、そのため腕も大きく振られて、腕が振られるたびに拳が大きく動いて、拳が動くたびに手綱を引っ張り、馬に止まれと指示してしまう。
 駈歩の反撞で、拳が2-30cmもバタバタと動いてしまう場合は、ハミには止まれという手綱の扶助が伝わっていると思って良い。
 >> 上体を安定させ、腕を肘から固めて(拳の握りは柔軟に)ぐらぐらしないようにして、馬の動きで腰が前に押し出されるときに、拳を自分に引きつけるようなつもりでいると、馬に対して拳をグラグラさせずに一定位置に保てる。

スピードに負けまいと前屈み
 駈歩では、馬のスピードに置いて行かれない様にどうしても前かがみになりがち。発進のときも、「さあ、これから駈歩だ。おいてかれないように」と前かがみになって加速に備えがち。ところが、前かがみになって人の重心が前に掛かると、駈歩をするために馬が前肢を浮かせることが難くなる。
 また、前屈みになると馬の動きにスムーズに随伴することが難しくなる。
 >> 上体はしっかり起こして、胸を張って膝を真下に落とし、深い騎座で座る。
 
推進不足
 駈歩で走り出したら駈歩の脚扶助をごりごりやり続ける必要はないけれど、体重による推進扶助とかは継続しなくてはいけない。体重による推進が充分でないと、馬の気分(?)で駈歩を止めてしまうことがあるが、速歩に落ちてから「おいおい、走り続けてくれよ」ではダメ。
 速歩に落ちる前兆(ペースが落ちる、3拍子だか4拍子だか判らないような歩様の乱れなど)があるから、これを見逃さず、強く駈歩の脚扶助を使って、走り続けなければいけないことを判らせなければいけない。
 こういう前兆を見逃して、漫然と乗っていると、勝手にサボって速歩に落とされてしまう。

手綱のコンタクトを失う
 ・ペースが落ちないように、手綱を緩めてコンタクトを失うと馬は駈足をやめてしまう。特にある程度調教された馬は、コンタクトが無くなると速歩に落ちてしまう。
 だから、「ああ、ペースダウンしそう。お願いだから走り続けて」と手綱を緩めることは逆効果になることが多い。M先生は「行って、行っての手綱は絶対ダメ」という。
 ところで、駈歩の推進のために坐骨で馬を押せ、という説がある。しかし、馬上で腰を前後させて漕ぐような動きをさせてはいけないとM先生は言う。体重は一完歩毎に上から下方向にしっかり掛けろという。これを腰を漕いで前に滑らせてはいけないと。

・駈歩の停止・速歩への移行
 半減却を使って、手綱を控える。
脚による扶助
 両脹脛で馬体をグッと絞める。筋力で絞めてはいけない。洗濯バサミの要領で絞める。

 速歩への移行の場合は、移行したら、圧迫を緩める。停止しそうになったら、脹脛で馬腹を圧迫。
 停止の場合は、完全に停止するまで脹脛での圧迫は継続。体重をしっかり鞍に掛けておくことも大事。体重が鞍から浮いてしまうと、なかなか停止の扶助はきちんと馬に伝わらない。

手綱による扶助
 拳を腹の前で強固に控える。(拳を引くというより、腹を前に出して、グッと固定した拳に近づけるイメージ)

 速歩への移行の場合は、移行したらすぐに手綱を譲る。停止しそうになったら、脚による圧迫と同時に、手綱をより大きく譲る。
 停止の場合は、完全に停止するまで手綱を控え続ける。

 前進気勢の強い馬だと、手綱を引っ張って止めようとすると、「痛てえ、引っ張るんじゃねぇよ」とばかりますます走り出して止まらない。
 姿勢を正しく、脚を使い、強固に両手綱を控えることができないと止まらない。
 乗り手の意思通り「きちんと止める」というのは、走り出すりも難しい。


踏歩変換と曲がり方 駈歩の発進と継続へ このページ先頭へ ハミ受けへ 受け売り乗馬教室先頭ページに戻る
 右へ曲がるときは右手前でなければいけない。ということは、右手前で走っていたら右へはそのまま曲がれば良いが、左へ曲がるときはそうはいかない。右手前のまま左へ曲がれば肢運びの手前が曲がる方向と一致しない反対駈歩になってしまう。

 馬によっては「あー今度は左回りになった、それじゃ左手前に変えよう」と、回転方向から判断して勝手に手前を変えてくれたりする。馬も反対駈歩では走りにくいのだろう。私のような低レベルな乗り手には大変ありがたい馬で、何にもしなくても手前を合わせてくれる良い馬だが、馬術的にみると、こんな風に乗り手の指示(曲がれとは指示したが、手前を変えろとは指示していない?)によらずに馬が勝手に運動するのはNGらしい。

 という訳で、曲がる方向によっては事前に手前を変えておく必要があり、これを踏歩変換と言う。これができないと駈歩で曲がる技術があるとは言えない。高級テクニックでは、直線上を進みながら、4歩毎とか2歩毎あるいは歩毎に右手前、左手前と替えるのもあるらしいが、もちろん、乗り手の技量も必要だが、馬にもこれをやる技量が必要。乗り手が超へたっぴぃでも、こういうことをやってのけるすごい馬というのが居るらしいが、そういう馬は値段もものすごく高いという。

 その前にまずは、手前を変える必要のない単純な曲がり方について紹介。

 右手前の駈歩をしていて、右に曲がる例。
駈歩のときの曲がり方
 黒で示した蹄鉄だけが地面についていて、他の薄い色の蹄鉄は地面から離れているとする。
 騎乗者はちょうど馬の尻があがることで前上方へ跳ね上げられている。
 右足のももを時計周りにわずかにねじり踵をやや前にだし、出した位置で脹脛の内側で馬腹をリズミカルに圧迫。
 左脚はやや後ろに引いて軽く馬腹を圧迫。(これをしなくても右足だけで右回りをする馬もいる。そういう調教をされているのだろう。)

 手綱は開き手綱。右手を右に開いて馬の首を右に誘導。
 反対の左手は馬の首の曲がりに応じてやや前方へ出して引っ張り過ぎないように注意。
 「左の手綱で壁を作れ」と教本には書いてあるが、左の手綱で馬の首をギュッと圧迫する必要はなく、手綱が馬の首に接触している程度でよいらしい。


 さて、踏歩変換( lead change )には、駈歩をいったん常歩に落としてから別の手前で駈歩発進するシンプルチェンジ( simple change)と、駈歩の歩様を続けたまま手前を変えるフライングチェンジ(flying change)の二通りがある。

 「simple change」ができないのに「flying change」が出来るわけがないということで、まず「simple change」から。

・simple change

 馬が回転方向から勝手に判断して手前を変えてしまうのを防ぐために、練習では直進部分を設けて、この絵のようにD字がふたつくっついたような図形で練習するのが良いらしい。

 上の図形は、このページをご覧になった方から、こういう図形で練習すべきだと教えていただいた図形だが、
Monty Robertsの教本を読んでいたら、次に示す図形で練習するのが良いと紹介されていた。

 最初は下の二つの図形のうち上に示すように、距離を離した二つの円をクロスする直線で結んだ図形で練習し、この図形でできるようになったら、二つの円を近づけて、クロスする直線部分を短くして練習する。この図形は fliying Change の練習用に紹介されているが、simple changeでも使えるだろう。

いずれの図形でも、この青い直進矢印部分で駈歩から常歩に下方移行して、直進している間に次に曲がる方向の手前で駈歩発進する。常歩区間は徐々に短くして、1-2歩で駈歩発進できるように練習する。

 たとえば、右周りで一周して手前を変えるところに来たら、歩度をおとして常歩にする。今度は左回りのために馬の顔をやや左向きにして、常歩で数歩あるいたらすぐに右足を引いて左手前駈歩発進の扶助を行って左回りの駈歩輪乗りをする。歩くのは絵の青い矢印の一部分。直線部分の間に踏歩変換できなかったら、(赤い円弧の部分で)一旦馬を止めて、円弧の部分でただしい手前の駈歩発進をして、練習を続ける。

 直進では左右に曲がらずに真っ直ぐ進んで手前を変えることが大事。

 常歩区間が長いと馬の前進気勢が衰えるので、常歩に落ちたらデレデレ歩かせずにすぐに駈歩の扶助を与えて走らせる。

 慣れてきたら駈歩の間にいれている常歩の歩数を減らす。徐々にへらして駈歩から常歩1-2歩、すぐにまた駈歩が出せるように練習。ここで肝心なのは、常歩の間に次の回転に向けて馬の顔を回転方向に向ける体勢を作ってやること。これがうまくいかず、たとえば反対を向いていたりすると、反対駈歩が出たりする。

 シンプルチェンジというのは結局、駈歩からの常歩移行、移行後ただちに任意の手前での駈歩発進の組み合わせだから、練習方法は上のような図形に限定されない。

 斜め手前変えの斜め蹄跡での変換、蛇乗りや3湾曲の直線部分での変換、巻乗りの巻き終わりに蹄跡へ戻る直線部分での変換、などなどあらゆる運動(図形)を利用して練習するとよい。上に説明した8の字や、D字の練習を延々とやるよりも、馬が飽きないように、いろいろな運動の折々に練習するのが実際的で良いように思える。また、大前提として、駈歩から常歩へのすばやい滑らかな下方移行ができないと、練習にならないから、踏歩変換の練習の前に、しっかり下方移行を習得しておく必要がある。

・flying change

 M先生にflying changeを教えていただいた、やり方は、以下のようなもの、
  (1)長方形馬場を使って蹄跡を駈足。
  (2)斜め手前変換のコースに入り、中央で(右手前から左手前に変える場合)空中浮揚期に移った時に素早く、左脚を前に出して、右脚を後ろに引いて、右手綱をしっかり控えて、左手綱で首をやや左に誘導。この手足の動作を一瞬のうちに行って、馬にはっきりと手前が変わるんだよと伝える。

 なれないうちは、(2)をやった後、すっ飛んでいくような駈足になったり、あるいは多少バタバタしたあとで手前が変わるが、練習だからそれでも良いらし。多少なれると、そんなに慌てて強い力で扶助を送らなくても良さそうだと判ってくる。

 flying change は、「flying changeができる(教え込まれている)馬で練習しよう」。半減脚と、しっかりはっきりした駈歩の脚扶助が使えるなら、flying changeができる馬に乗ってやれば、flying change はさほど難しくない。

 唯一気をつけなければいけないのは、たとえば、左手前に変換させようとしたときに、左駈歩の扶助を送る前に、馬が「(次は)左回転だ、左手前にしなくちゃ」と考えて左手前に変換してしまうこと。馬が勝手に変換してしまう場合は、変換しそうになったら、右手前の輪乗りを継続させて変換を許さないようにする。勝手に変換しなくなったら、新しい手前の駈歩の扶助を送って変換させる。

 flying change で後肢の手前が変わるときに尻がやや大きく上下動をするから、騎座へ伝わる感覚から手前が変わったことは感じられる。


駈歩でのハミ受け 曲がり方へ" このページ先頭へ 駈歩の練習へ 受け売り乗馬教室先頭ページに戻る

  馬がハミを受けるという状態は常に作っておくことが好ましく、本来は鞍にまたがったときからハミ受けをさせておいて、走り出してもハミを受けた状態を保つのが良いとI先生には言われた。しかし、乗った直後、あるいは常足でハミ受けをさせることができても、駈歩をさせると歩様の変化で乗り手の体勢が崩れるのか、あるいは、手綱に頼ってなにかやらかしてしまうせいか、ハミ受けをつづけさせることがなかなかできない。

  そこで、ハミ受けをせずに駈歩をしている状態からハミ受けをさせる方法をI先生が教えてくれた。ただし、今はこの教えていただいた方法が良いとは思えなくなった。というのは、ハミ受けができるように調教されている馬に乗って、しっかり推進して手綱のコンタクトをしっかり安定に保てば、I先生の方法を使わなくても駈け足でハミ受けをしてくれるから。

 まあ、このような教え方(? 考え方?)もあるのかという参考にして頂ければよいと思い、記事を残してある。

(1)輪乗りで駈歩。(以下、右手前と仮定)
(2)脚の位置は通常の輪乗り駈歩と同様、右脚をやや前に馬腹を圧迫して推進、左脚は後方へ引いて馬を抑える。
(3)右の手綱は一定の位置に控えておいて馬の首を回転内側(右)に向けて保っておく。
(4)左の手綱を一完歩毎に、1、控えるー1、控えるー2、譲るー2、譲る と1,1,2,2,1,1,2,2、と繰り返す。
するとあるタイミングで馬がぐっと首を下げてハミを受けてくれる。(うまくゆけば2-3回繰り返すだけでハミ受けをさせられる)

  馬の首がぐっと下げがると同時に乗り心地が格段に良くなる。まるで自分がすごく上達したかのような乗り心地になるので、ハミを受けてくれたかどうかは乗っていてすぐに解る。ハミ受けは乗り心地改善の手段ではないのだろうが、反撞が柔らかく緩くなるのが感じられる。

  馬がハミを受けてくれたら手綱を適当に控えてハミとの拳とのコンタクトを保つようにする。

  ハミ受けをさせて駈歩をさせることができれば、ぶっ飛んだ駈歩になって落馬という駈歩でのトラブルはなくなるとI先生は言う。乗り手に対する従順性もハミ受けによって生じるのかもしれない。というか、ハミを受けてくれるということは馬が素直に乗り手に従っているということのようだ。


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 乗馬クラブによっては駈歩をさせてくれるまでに相当鞍数をこなさないとダメで、なかには、駈歩の個人レッスンを受けたあとでないと駈歩をさせてくれない、その個人レッスンもなかなか予約がとれない、というようなクラブがあるようだ。

 駈歩はそんなに危険なものじゃないから初級からどんどん駈歩もやって、駈歩の反憧に体が対応できるようにしておくべきだと思う。習うより慣れろで、常歩から駈歩、駈歩から常歩を繰り返しおこなうことで駈歩発進の要領が判ってくる。常歩から駈歩の方が、速歩から駈歩よりやさしいという説もあるし、駈歩から常歩は、駈歩から速歩よりも難しく練習の価値がある。

 ところで、駈歩ができるようになると反憧がとても快適、気持ちよく乗っていられることから、できるようになったうれしさも手伝って延々と駈歩を続けたりしてしまいがちだが、これはよくないらしい。

 駈歩は10歩程度で下方移行をするという駈歩ー>速歩、あるいは、駈歩ー>常歩を頻繁に繰り返した方がずっと学ぶことが多く、練習効果も高いとCRは言う。

 理由は、
(1)初心者は駈歩の最初の数歩で体を固くしてしまい勝ちで、そんな固くなった体で駈歩をしては馬にも人にも良いことはない、
(2)下方移行の時に、駈歩には理想的な深い騎座が得られる、
ということだ。体が柔らかく、駈歩の動きに充分ついていけるなら歩数を伸ばしてもよいが、ちょっとでも馬の動きについていけないと感じたらすぐに下方移行して、再度駈歩をやり直すのがよいと言っている。

 下方移行のときは、大腿を回して(右の太腿は左回り)太腿内側前上部で鞍の鐙革托鐶近傍を覆うように膝を下げろ(太腿は縦に伸びる)と言うことで、これで馬が背を丸める余地を鞍下に作り、下方移行のための後肢の踏込を行えるようにする。で、この下方移行の練習が駈歩にも役立つ。

 駈歩発進して半周から一周したら、手綱を控えて常歩にして、数歩あるいたらすぐに駈歩発進の扶助をして駈歩を出す。最初は扶助に苦労するが、馬がこちらの意図を理解してくれるようになるのか、なんどかやっていると素直に駈歩を出してくれるようになる。乗っているほうはなんとなく駈歩発進の扶助がわかったような気になる。(馬の賢さに頼って、こんないい加減なことでいいのかしら?)それにこの練習は、simple change のためにも必須な練習のように思う。

 輪乗りが速さも適当にコントロールできるので 輪乗りで練習。最初は 調馬索で練習すると簡単に馬(鞍)の動きに慣れる。



山中湖乗馬クラブ 馬車道で駈歩を楽しむ
何頭かいるうちの2頭に乗ったが、このクラブの馬は素直な良い馬だった。



山中湖乗馬クラブ 馬車道で駈歩を楽しむ
この馬はもとは東大馬術部にいたことがあるそうで、20歳は軽く超えているが、気持ちよい駈足を楽しませてくれた。


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