馬上・鞍に跨る 受け売り乗馬教室先頭ページに戻る
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  馬は人が跨って乗るのに大変都合のよい体型をしているが、馬の背は適当に不安定で、油断すると落ちてしまう。この「跨って乗るのに適しているが、適度に不安定で落ちやすい馬の背」に乗るというところが乗馬を緊張感のある面白いものにしている。

  で、乗馬の第一歩は馬の背におかれている鞍に跨って安定な姿勢を保つことから始まる。

馬に関する基礎知識これ必須知識!!
鞍の種類 鞍の跨がり方(騎座)
鞍上の姿勢と扶助 反撞を抜く
座る位置 鞍上でのCheckPoint
合図のタイミング 腹帯の締め方
左右に曲がる姿勢

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  流鏑馬など特殊な乗馬を除けば、一般的にはブリィテッシュとウェスタンのどちらかのスタイルで乗ることになるが、それぞれ使う鞍は違う。

  ブリティッシュで使う鞍は障碍用、馬場馬術用の2種類と、この中間の形状の総合鞍の計3種類。

・馬場馬術用の馬場鞍

 しっかり馬体を挟んだ脚による扶助がしやすいよう、あおり革の部分が縦に長い。
 騎座を安定に保つために、騎座面のカーブも深いものが多く、鞍の後橋もかなりせりあがって高い。
 この鞍で障碍などを跳ぶと、この高くなっている後橋に騎乗者の尻が追突されて跳ね落とされる可能性がある。
 障害鞍に比べて、鐙革托環が鞍壺に近い位置につけられている。

・障碍競技用の障害鞍

 ツーポイント姿勢をとりやすいよう、また、飛越時に安定した前傾姿勢をとれるように、あおり革の部分は短く、かつ、前方にせり出した形になっておりニーパッドも分厚い。
 騎座面のカーブも浅く、鞍の後橋も低いので、障碍飛越時、鞍の後橋と騎乗者の尻がぶつかり難くできている。
 総合鞍に比べて、鐙革托環が鞍壺から遠い位置につけられている。

・ウェスタンの鞍

 カウボーイ時代の名残(現代でも子牛を捕まえたりする競技などに使う)のホーンが特徴。
 全体にがっしりしていて、重い。鐙を釣る革部分の構造がブリティッシュとは違うので、鐙革とあおり革の間に脹脛を挟まれてミミズバレというようなことはない。チャブス無しで、短靴だけで乗っても安心。
 腹帯の留め方もブリティッシュとは違う。
 ブリティッシュより硬くて尻が痛い気がするが、長時間乗っている分には意外とウェスタンの鞍の方が楽。鞍に跨るというより、鞍に座るという感じがぴったり。


ブリティッシュの鞍の各部の名称は下の通り。

 鞍に跨るときは鞍壺(くらつぼ)という一番低い部分に坐骨が収まるように跨る。前橋(ぜんきょう)や後橋(こうきょう)には体重を預けてはいけない。

 鐙の長さを調節するときは小あふりをめくりあげて鐙革托鐶(あぶみかわたっかん)に掛けてある鐙革のバックルを引っ張り出してピンを外して長さを調整。


 鞍によっては、部分的に硬いでっぱりがあったりして、尻にグリグリと違和感があったりする。これを「まあいいや」とかまわず乗っていると、「あれれ擦ったかな?」と気が付くころには、出っ張りに擦れた部分が赤むけになる。

 一旦尻が赤むけになると大変。表皮が薄く剥けるだけなので出血が少なくカサブタができず、ジクジクと体液がしみだす状態が続く。包帯やガーゼを当てても、日常生活で椅子や座布団にしょっちゅうこすられて、なかなか治らず惨めな思いをする。
朗報:こういう傷には エアーウォール というハイテク絆創膏が良い。少々高価だが、一度使えばこれなしでは考えられない。鞍による擦り剥き傷には最適。>

 こういう違和感のある鞍に当たったときは遠慮せずに申し出て換えてもらおう。「これだと赤むけになっちゃう」と言えば代えてくれるはず。

 ところで、人の尻の皮も擦れれば痛いが、馬の皮は人間に劣らずとても薄いらしい。馬の皮は牛の皮と違って、薄くて使い物にならないとのだという。たしかに馬の皮をつまんでみるとずいぶん薄く感じる。このため、鞍のつけ方とかが悪いと馬の背にはすぐ鞍傷ができてしまう。


鞍の跨がり方 騎座 鞍と尻の相性へ このページ先頭へ 鞍上の姿勢へ

 馬に乗る基本姿勢には、下の絵の三つの姿勢。
乗馬姿勢
左端から右へ順に、
- スリーポイント姿勢(three point seat)、
- half seat 、light seat
- ツーポイント姿勢(two point seat)という。

 左端の乗り方(スリーポイント姿勢)では、基本的に尻は鞍に付けておくが、右へゆくほど尻を鞍から高く浮かせる。

 ツーポイント、スリーポイントという名の由来は諸説があるようで、どれが本当か判らない。ハンターシート馬術の著者によれば、ツーポイントというのは、騎手の脹ら脛と馬腹の接点を一点(ワンポイント)として、左右にこれがあるから2点で馬と接触する乗り方という意味でツーポイントだと言う。これに座骨が加わって座骨でも馬と接すると3点となってスリーポイントだと説明している。左右の鐙を踏みしめていて尻が鞍につかないから、左右の鐙で一点ずつ合わせツーポイントだという教本もある。

 欧州の教本では、スリーポイントというのは、座骨(左右の座骨で2点)と股間(crotch)の計3点だという説明がある。座骨と股間の三角形で乗るという説明は多いので、これが伝統的説明かも。だが、恥骨(pubic bone)が鞍に着くように乗る姿勢を fork seat (フォーク座り?)といってダメな乗り方の代表にされているから、この説もいまいち。


(1)スリーポイント姿勢(three point seat)
スリーポイント姿勢
 馬場馬術などでごく普通に見かける乗り方。軽速歩などの場合を除いて、基本的に尻は常時鞍に付けている。深く鞍に座るので deep seat とか full seat とも言う。
 真横からみて、乗り手の重心(赤で塗りつぶした丸)から真下に下ろした線(青い点線の矢印)上に鞍壺(赤い丸)と踵が一直線に並ぶのが良い姿勢とされている。
 踵は腹帯より10cm弱後ろ、膝は鐙革よりも前に位置させる。脹ら脛はあおり革の下部で馬体に密着する。

 膝で鞍を抱きしめてはいけない。膝で抱くと、脹ら脛は馬腹から離れてしまう。

(2)ハーフシート・ライトシート(half seat, light seat)
light seat
 着衣(キュロット)は鞍に触れていてもよいが、尻は決して鞍に付けない。
 体重は全部鐙に乗せて、軽く前傾して尻には体重を掛けない。
 重心から真下に下ろした線は鐙革にそってまっすぐ鐙の上を通る。

 馬の背に負担を掛けない柔らかい乗り方ができる。この乗り方ができると、馬に暴走気味に走られても鞍からの衝撃を逃がすことができるので、鞍に跳ね上げられて落ちそうになって慌てるというようなことがなくてすむ。

(3)ツーポイント姿勢(two point seat)
ツーポイント姿勢
 障碍飛越や、襲歩などでの乗り方。尻は鞍からかなり離れた高い位置に保つ。障害や襲歩でなくても、この姿勢で乗るのが、馬の背背に衝撃を与えない優し乗り方だから、良いという話もある。
 この姿勢でもやはり膝で鞍を抱いてはいけない。膝で抱くと、脹ら脛が馬体から離れてしまうので正しいツーポイント姿勢ができなくなる。

 これら三つの姿勢のどれででも、常歩・速歩・駈歩の3種の歩様で、安定して鞍に跨がっていられなくてはいけない。逆に、いろいろな歩様で、これらの姿勢をじゅんぐりに替えて乗るような練習は安定した姿勢の維持にとても役立つ。さらに練習としては、棒立ち乗りも入れて、3種の歩様で、棒立ち・ツーポイント・ハーフシート・スリーポイントをぐるぐる代えて乗るのも良い。

 これより下の説明は、スリーポイント姿勢を前提にしている。ツーポイント姿勢のより詳しい説明はこちら。


 騎座で推進するとかよく言うが、騎座とは具体的には何かがよく判らない言葉。JRAの教本には「騎座とは騎手が馬に跨ったときの腰部(骨盤)・大腿・膝までのことを言い、馬に扶助を与える際の中枢をなす部分である」と説明されている。

 座骨に体重を掛けるのが大事だとばかりに、裸馬でも座骨だけに体重を掛けたりしていると、これはもういかにも馬の背を尖った座骨でぐりぐり痛そう。「上半身の体重を坐骨のみに押し付けて乗るのでなく、馬体を締め付ける力を大腿から膝に分散させることにより、馬の背中の動きを妨げない騎座ができると考える」というJRA教本の筆者の意見がとても自然に聞こえる。

 CRでは坐骨、尻、股間で乗るという、特に大腿を左の絵の緑の矢印のように回して、大腿の外側を前に出して、膝を真下に伸ばして、太腿内側の上部から股間が鞍の鐙革托鐶付近に覆いかぶさるようになるのが良いという。
 こうして体重を坐骨だけでなく、太腿上部の内側に分散させるのが馬の背に優しく、馬が背を丸めて後肢を踏み込んで人の体重を支えるのを助けると言う。

 上の絵の薄青く網目を施した部分で体重を支えるイメージ。ちょっと前すぎるような感じだが、馬の背で、き甲のあたりはもっとも上下動がすくなく、尻の方へよれば寄るほど動きが大きいので、人が前方に乗れば乗るほど馬は楽だという。

 このあたり馬の重心(前橋よりずっと後ろにある)の上の乗らなければいけない、という説と矛盾するが、真偽は判らない。ただし、実は馬の重心はあばらの13本目あたりにあって、昔考えられていたよりもずっと後ろにあることが今では解っている。だから、人馬の重心の一致ということが言われるけれども、それは厳密には不可能。(馬の重心は鞍壺よりずっと後ろにある)

 たしかに、このイメージで乗ると、裸馬でも柔らかく乗れるし、普通に鞍を付けて乗る場合にも、馬の背への衝撃をずいぶん軽くできるように感じる。どうしても馬の背でドスンドスンするなあという人は是非試してみる価値があると思う。

 ただし、上はCRのお勧めだが、M先生は、体の裏側を使って乗れと言う。脚のより後ろ側を鞍(馬体)につける感じで乗る方が良いらしい。CRお勧めとどちらが良いか判らない。

 で、「鞍に座る」というと、

この絵のように椅子に腰掛けるような姿勢で、骨盤から大腿骨を斜め前に突き出し、膝を曲げて向こうずねを下に垂らして、馬の背に腰掛ける、というイメージになりがちだが、こういう椅子に座るようなイメージで両ひざを前に揃えて出すと、上から見た両股の角度が狭まって膝がどうしても高い位置になる。

 すると膝で鞍を締めつけて抱き着くようになり、脹脛で馬体をしっかり挟むことができず、重心も上がって安定しない。特に、だらしなく椅子に座った時のように骨盤を後ろに倒して、尻の後ろが鞍に着く座り方は、文字通り「chair seat」(椅子座り?)と言って、だめな跨がり方の代表になっている。

 もう一つのダメな座り方が、「fork seat」と言って、骨盤が前に倒れて背中が引っ込んで、恥骨(pubic bone)が鞍に押しつけられるような跨がり方、口の悪いインストラクタは「金玉乗り」と悪口を言う。安定しているようだが、却って骨盤が馬の動きを吸収する動きをするのを妨げるからダメだという。

 正しくは、chair seat と fork seat の中間で、左右の座骨の前方にあるゆるく丸みを帯びたやや平らな部分が鞍壺に接するように乗って、恥骨は鞍には着かず鞍の上に浮いた状態で跨がる。これだと、馬の動きに合わせて身体のバランスを取りやすいという。

 下の絵のようにイメージして跨がるとよい。

 脚はまっすぐ(下に)伸ばして、背もぐっと伸ばして、大腿(骨)を外から前に回し(左足なら上からみて時計回り)、股関節を折り曲げて太ももを前にだすのでなく、横に開いて膝をまっすぐ下に落とすつもりで左の絵のように立つ。
 この姿勢のまま、自分の脚が西部劇時代の木の洗濯ばさみだとおもって、鞍の上からぐっと洗濯物を挟み込むつもりで、鞍の両側に脚を降ろすイメージで鞍に跨がる。
 上から両膝を見たときに、両膝の角度は直角よりもずっと広く肢を広げて跨る。

 これで自然に足はだらんと真下に下がり、重心も下がって安定する。

この要領で鞍に跨がったところは下の絵のような感じ。

 太ももの外側を前に回して、膝を思い切り真下に下げると、左の絵のような感じになる。すると不思議なことに鐙に足をどうやって掛けるか、鐙への体重のかけ方が判らないなどという疑問はどこかへ吹っ飛んで、ごく自然に柔らかく鐙を踏める。

 欧州の馬術教本には、足は極力真っ直ぐ下に下ろせという説明が多い。上で説明した跨がり方は、足(膝)を真っ直ぐ下ろして、深い騎座を得るのにとても役立つ。それに、これだとつま先も開きすぎずちゃんと前方を向く。

 ただし、座骨に体重が掛からないほど(全体重を内股で支える)になってはいけないという。また、膝で鞍を抱くことも厳禁。


・CRに説明されている太腿を下げて乗る方法:

(1)太腿を前に出すのではなく、大腿骨(だいたいこつ)を外側に回して(左脚なら上から見て時計回り)腿(もも)を馬腹に沿って真下に垂らす。
 股間、太腿上部内側前が面となって鞍の鐙革托鐶の上あたりを覆うようなイメージを持つ。(この絵はイメージのまま絵にしているので、坐骨が鞍壺のかなり前によっているが、実際はこんなに前には寄らず鞍壺に座る。)
(2)膝から下の肢(下腿)は切り離されて紐で吊り下げられているイメージを持つ。

 この騎座で乗ると、不思議なことに、鐙がどうこうしたという意識がどこかへ行ってしまい、非常に軽く鐙に乗れる。体重が坐骨だけでなく太腿の付け根、股間、尻と広く分散され鐙には重さがほとんどかからないようになるからだろうか?試してみる価値はある。鐙の感覚が一新する。


 CRに紹介されている洗濯バサミのイメージ

 CRでは鞍を跨いだ肢は、昔の西部劇に出てくる洗濯バサミのように洗濯紐の上から押し込む力でぎゅーっと挟み込む(特に下方移行(速歩から常歩への移行など)ではこれが必須)と言っている。
 決して内腿の筋肉を使ってグーッと締め付けるのではない。

 このイメージはとてもよくて、これで乗ると膝も持ち上がらない。

 大腿骨は内側に回転(右足なら左回転)して、股間が鞍の前橋近くの鐙革托鐶のあたりを覆って騎座がとても安定する。骨盤は水平に保つ。


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 扶助のために、肩はこう、腕はこう、脚はこうだと個別部品をどうするこうすると言っても、それは結局深く柔らかく安定した騎座が得られている事が前提。たとば、腕はこうすると言っても、姿勢を保つために腕の助けを借りなくてはいけなくては、腕を扶助のために自由に使うことはできない。
深く柔らかく安定した騎座を体得するための練習

 鐙あげ:常歩、速歩、できれば駈歩でも、これをみっちり練習。脚は前進気勢が落ちてきたりしたときに、軽く触れる程度に使う。きちんと訓練された馬に乗れば、脚でグイグイ推進しなくても、これで安定して乗れれば馬は元気よく前に出てくれることが解る。


 上の右側〇印の絵のように膝頭、脹ら脛、踵を鞍や馬体から離して、尻と股間で体重を支えて真っ直ぐに座る。
 左側×印の絵のように脚を馬体や鞍に付けてはいけない。特に膝頭で鞍を抱いてはいけない。

このとき下の絵の左側のように脚が前に突っ張ってはいけない。

 股関節の柔軟性がないと、かなり難しいが脚は右側の絵のように後方に引いておけるようにする。

 このとき膝関節を曲げるのでなくて、太ももから広げて後ろに引けなくてはいけない。また、脹ら脛や踵を馬体から離しておくように頑張る。
 上体のロボット化: 体幹は動かしていないつもりでも手綱を使ったときとか、無意識に身体が傾いたりする。すると騎座の安定は損なわれてしまう。

 そこで、自分の身体が体幹に柔軟性のないロボットのようなものだとイメージして、絶対に身体を傾けないように意識する。これは、CRでいう床屋の回転式看板のように体を使うというのと同じことかもしれない。

 上の絵の緑の正方形を意識して、いかなる時もこれを崩さない。
 腕も、馬に負けないように(馬が多少前に引っ張ったからといって、これに合わせて拳の位置を前に出してはいけない)して、正しい姿勢の拳の位置(肘をきちんと曲げて、脇腹に付ける)を保持する。

手綱を左右に使うときも、もちろんこの緑の正方形を崩してはいけない

 たとえば右に曲がるときも、この正方形の形を崩さずに、身体全体を右に向けて手綱を右に誘導するつもりで動かす。そして、右に曲がれという気迫を込めて、右拳は強く握りしめ、左拳はやや緩める。

 訓練されている馬はこれで充分曲がってくれる。馬の首がぎゅうっとねじ曲がるほど曲げていけない。
 大きな段ボール箱を抱える: 体の前に大きな段ボール箱を抱えているイメージをもつことも、姿勢の安定に役立つ。

 拳で作る正方形の上の段ボール箱を抱えると下の絵の左はしのような形になる。

 この(左端の)形は、腰をやや張って、上体はまっすぐに起きた良い姿勢。

 真ん中は頭が前に傾いたために、段ボールが落ちそうになっている。逆に、段ボールをまっすぐ保持しようと意識すれば、頭が前に傾くことが避けられる。

 右端は腰がくぼみすぎて騎座が浅くなっている。しっかり段ボールを支えようと思ったら、こんなに腰をへこませる(そらせる)持ち方ではしっかり支えられないから、こういう悪い姿勢になることも防げる。

 上の練習をしっかりやると、体重による扶助というのがなんだか多少判ってくるような気がしてくる。


 これらの練習を積めば、以下に書いた個々の話はそれほど気にしなくても良いもののように思えてきた。なんだかんだ言っても、動き回る馬に深い騎座で柔らかく乗れていれば、馬は素直に動いてくれるものなんだと思えてきたから。


・馬上の姿勢の基本

体の部位 姿勢 補足
頭頂を真上に引っ張ったつもりで真っ直ぐ前を向ける。
肩甲骨をくっつけるように胸を広げてから、力を抜いて楽に。 背を丸めた猫背は最悪。
肘を脇腹のやや後ろに位置させて、脇を空けずに手綱を持つ。 肘を上げてはダメ。
背骨 頭のてっぺんを真上に引っ張られたように、まっすぐ背伸びした姿勢を保つ。 臍を引っ込めてはダメ。
腹筋・背筋に力を入れて、坐骨が鞍壺にぴったりはまるように腰骨を立てて鞍に跨る。 腰・背骨をまっすぐ固定。
太腿の付け根あたりは鞍にぴったり添えて坐骨と共に体重をささえ、膝の内側は鞍のニーパッドに軽く添え、脹脛は馬腹に軽く添える。 膝で鞍や馬体を締め付けて抱いてはいけない。
足首 力を抜いて、踵を下げる。  

 CRでは、体の中心から樹を成長させろと言っている。中心から体の中にまっすぐ上に幹を伸ばし、真っ直ぐ下に根を伸ばす。このとき体を力で伸ばしてはダメで、あくまでも樹が自然に成長するようにイメージする。このイメージをしっかり持つことで真っ直ぐ、深い騎座で乗ることができると言っている。

 また、首(頭)は肩が回る以上に回してはいけない。つまり頭だけねじって横を向いたりしてはダメ。上半身は床屋のクルクル回る広告塔のように、胴体と頭を一体にして回す。斜め前を見るときは胸に目がついているつもりで、胸を対象にまっすぐ向ける、頭だけぐるっと回して見てはいけないと言っている。


良い騎乗姿勢

 ・腕は上腕をほぼ下に下げ、前腕は前方に出す。肘を曲げて、手綱と前腕は一直線に。
 ・肩を楽にして 肩甲骨を背中で近づけるようにして胸をはり 肩を上下にがくがくさせて力を抜く。
 ・鐙には体重は掛けずに、つま先に近い部分で鐙を踏んで、踵を下げて、足の重さだけを掛ける。
 ・上半身の重さは坐骨でささえ、脚の重さは鐙で支える。

  腕のポジションと手綱の持ち方はこちらへ。

良い背骨の状態

 ・鞍の上で上体を背伸びするように真上にぐっと伸ばす。
 すると 自然にお臍と背中が近づくようになり、背骨は自然な「S」字形になって、骨盤は水平あるいは、ほんのわずか前に倒れる。

悪い背骨の状態
腹がへこんだ悪い姿勢
 この絵は、どっこいしょと一休みのNG姿勢。

 ・お臍が引っ込み、背骨は臍側へ丸く湾曲している。仙骨が鞍についてはダメ。(chair seat という悪い跨がり方)
 ・お尻が面で鞍の後部にべったりと接触(図の赤い楕円部分)してはいけない。
 鞍との接触面積が大きいので安定しているように思えるが これは悪い姿勢。

 何があっても騎乗中は 「腹を引っ込めて 背中を丸めて」はいけない

腰の張りすぎた悪い姿勢
これはfork seat という悪い跨がり方
 ・腹は引っ込んではいないが 無理に前に出して、骨盤を前に倒しすぎ。
 ・股間が鞍に押し付けられるようではダメ。
 ・腰骨の上(背)が極端に凹んでおり これでは腰の反らせすぎ。

腰を張る

 「もっと腰を張って」という注意を時々耳にする。しかし「胸を張る」というのはどういうことか判るが、「腰を張る」ってどうやるのかピンと来ない。おまけに、インストラクターによっては、「腰を張る」という表現で、「骨盤を前に倒して(ヘソを前に出して)背中をくぼませる」という意味であったり、これとは正反対に「骨盤を後ろに倒して(ヘソを引っ込めて)腰を伸ばせ」という意味であったりするから、余計に判らない。

 古い教本によると、腰を張るというのは、骨盤を(後ろに倒す方向に)動かし、腰の背中側を伸ばすようにする動き。かなり以前の「乗馬ライフ」でも、これと同じ説明(下の(2)と同じ説明)をしていた。けれども、ヘソを前にだして腰をへこませることが「腰を張る」ということだと解釈しているインストラクターが多いように感じる。

 古い教本による説明は以下の通り。
この(1)~(3)の動作をしてみて、腰を張る動きを理解せよと言う。

(1)机の端に本を寝かせて置いて、

本に正対して立って(骨盤を縦に回して)腰(恥骨の上)で、はみ出した本を机上に押し戻す、

あるいは、
(2)椅子のはしっこに腰をひっかけるようにして座って、

足を重心の下、床につけて、骨盤を上向き気味に前に押し出して椅子を前に傾ける、

あるいは、
(3)仰向けに寝て、

膝を立てて、腰を床から離す。このとき背筋の力で背骨を曲げて腰を浮かせるのではなく、仙骨を床から離すようにして腰を空中に浮かせる、

 こうした動きが「腰を張る」という動作だということで、これを馬上で実際にやって見ろという。ふうーんと、この絵を見て理解した気になるだけではダメらしい。

 ただし(1)(2)では後傾しているが、後傾することは腰を張ることと何の関係も無く、単に後傾しても腰を張る効果は無いという。

 で、腰を張るというのは、扶助の号令を下しているのと同じだという。だから、腰を張ることだけをやっても意味はなく、必ず脚や手綱の扶助と一緒になって意味を持つということらしい。

 教本には、たとえば、脚を締めて乗って、腰を張るとともに手綱を緩めれば馬は前進、緩めなければ馬は停止する。腰の効果は同じで、違いは手綱の扶助の違いだけ。調教の完全でない馬だと、このとき脚の圧迫を必要とするが、脚で圧迫するときも、腰を張ることと、手綱による扶助が必要。腰を張らなければ、前進のためにはより強い脚での圧迫が必要で、停止のためにはより強く手綱を引かなければならず、扶助が粗暴になる。鋭敏な馬は粗暴な扶助を嫌うため、たちまち反抗的になる、と解説されている。

 しかし、一歩毎に腰を張ったり緩めたり、歩毎に漕ぐように腰を動かすのは間違いだと、(腰を張ることが大事だという)先生も言う。RRでも「しきりに腰を前に突き出す騎手を良く見かけますが、シートと体で推進力を生み出すことはできません」と言っている。

 腰を張ることの効果を実感し、これを習得するためには、常歩での停止・発進、速歩での停止・発進を何度も繰り返し練習することが効果的。効果を実感できないときは、馬を取り替えて練習する。

 腰を張ることに反応する(調教されている)馬に乗ると、結構有効に作用することが実感できる。楽しく乗れればそれで良いという乗馬から、馬術に進むには必須の技術なのかもしれない。

 けれども、腰を張るなんて古い理論・テクニックだという考えで調教されている馬だと、どうなんだろうなぁ?


・扶助の基本

 以下には便宜的に、〇〇による扶助というように脚や手綱の働きを別々に書いているが、扶助というのは決して単独では意味を持ち難いものらしい。体重、脚、手綱 これらが一体となって効果を発揮するものだから、たとえば、脚にも手綱にも無頓着に体重だけをいろいろやっても、意味のある扶助にはならないことに注意。

(1)体重による扶助

 体重の掛け方(場所、方向など)で馬に前進を促したり、左右に曲がることを促す。

 体重による扶助は馬を曲がらせたり、横に移動させたりするだけでなく、「前方への推進」のための扶助でもあることが大切らしい。M先生は体重扶助で推進せよと言う。たしかにM先生のところの馬は、以下のことが上手くできると、脚でグイグイやらなくても旺盛な前進気勢を示してくれる。

 推進のための体重扶助のイメージは図のようなもの。

・露骨に腰を張らない方が良いようだが、気分的には体重を掛けるごとに腰を張る気持ちになる。
・体重を掛ける方向は左側の緑の矢印の方向
・馬上の姿勢の感覚は右側のようなイメージ。

ただし、この絵では脇が開いているが、実際には開かない。気分的にこの絵のような大きく構えた姿勢で膝を十分広げてどっしりした気持ちで鞍に跨がる。

(2)脚による扶助
 脹脛のやや上部で馬腹を圧迫することで前進、横へ寄れ、曲がれ、などの指示を出す。脹脛で馬体を両側から挟んで発進、加速、停止、後退などを指示し、左右不均等に圧迫することで曲がれ、横に寄れを指示。

 拍車を付けているからといってしょっちゅう拍車を使ってはいけない。拍車は、ここというときに鋭く使う。チョコチョコと常にメリハリ無く使うのは、馬がもっとも嫌う使い方だという。
 初心のうちは体重による扶助はできないので、脚による扶助がメイン。

 ポンポンと蹴るように使ってはいけない。踵でドカッと蹴るなどは最後の手段。

(3)手綱による扶助
 手綱を使って、馬の顔(首)を進行方向に向けて、その方向に曲がったり、両方の手綱を均等に控えて減速や停止などを指示。
 手綱は、敏感な馬の口に繋がっているから、とても強い強制力を持つ。最初はどうしても手綱に頼ってしまうが、手綱は補助的に使うべきで、主な扶助は体重や脚による扶助だと認識しておくこと。
 手綱で馬の首を曲げてやれば馬は曲げられた方向に進むと考えてしまうが、体重や脚による扶助が適切でないと首が向いている方向に進んでくれるとは限らないことは乗馬を習い始めてすぐに経験する。

(4)鞭による扶助
 馬の肢の踏み込みを促したりするために使う。踏み込みを促す等の目的には長鞭を使って軽く馬体に触るように使う。

 あるいは、乗り手に神経を集中させるために使う。以前はちゃんと通じたはずの扶助をきちんと出しているのに馬が反応しない、などというのは馬が乗り手に意識を向けていないか、乗り手を軽く見ているから。こういうときは遠慮せずに、鞭を使って、「乗り手に注意を払わなければいけない」ことを馬に教える。通じないときは、かなり強く「バシッ」と鞭をいれて良い。ただし、このとき馬が跳ねたり、走り出したりする可能性があるが、それでうろたえてはいけない。

 叱る必要のあるときは遠慮せずに使う。こういうまずいことをやっていると鞭を入れられると判ると、馬はそういうことをしなくなる。但し、叱る原因となる行いをしてから1秒以内に懲戒しないと、叱られていることの因果関係が判らないと言われている。さらには、ほとんどの馬は懲戒の原因や動機を理解できない、という説もあり、馬を叱ってしつけようというのは良い考えではないらしい。

(5)声による扶助
 「駈歩」「ホー」などの掛け声で馬をコントロールできる。馬は調馬索訓練などで、「駈歩」と言われると駆け出すように訓練されているから、声も扶助として有効。

 馬の意識を騎乗者に向けるためには舌鼓も有効。速歩などのリズムを保つのにも使える。
 競技会では声による扶助は禁止。
 暴走や、暴れたときなど「ホー、ホー」と声を掛けることも馬を落ち着かせる大変有効な手段。

(6)気迫による扶助
 I先生は、乗り手の気迫というものは馬に伝わるものだから、気迫も大事だという。

 駈歩をさせようとして扶助を行う場合、「走れ」という気迫を込めて扶助を行うのとそうでないのでは馬への効果が全然違うという。
 乗り手は自信をもって乗れということを言っている教本もたくさんある。馬には乗り手の心理状態が判るというから、そういうことと関係しているのかも。


 ということで、声や気迫による扶助を除くと、馬上の体勢が安定して脚が自由になっていないと思うときに思う扶助が出せない。なので、馬上で正しい姿勢が保てることが一番大事だということになる。馬がいろいろな運動(駈歩、回転、など)をしているときでも馬上で安定して鞍に跨っていられなくてはいけない、と言うのは簡単だが。。。。。

反撞を抜く 鞍上の姿勢へ このページ先頭へ 座る位置へ

 馬が歩いたり走ったりすると馬体は上下左右に揺れて、特に速歩では鞍が大きく上下して乗り手は鞍に跳ねあげられて鞍と尻が餅つき状態になる。この反撞を吸収して安定に乗れないと、ドスドスと鞍と尻が衝突して尻が痛くなるし、馬の背には不快感や痛みを与えたりする。

 これに対して常識的には「反撞を抜いてやればいいじゃないか」となる。乗馬関連のWebにも「反撞をどうやって抜くのでしょう?」「反撞がうまく抜けません」というようなFAQがたくさんある。

 鞍に尻が着くとき、腰を柔らかく曲げて鞍に着地して、このアニメのように腰をグニャグニャやって反撞を抜こうというのが一案だが、これは「絶対にやってはいけないことだ」と先生は言う。

 ではどうしたらよいかというと、腹筋・背筋に力を込めてぐっと背伸びした姿勢を保てと言う。反撞は逃がすのでなく腹筋・背筋で固めた背筋でしっかり受け止めろと。馬の背をドスドス痛めつけて申し訳ない、などと気にしてはいけない。そんなことよりも、「(どんなに弾もうが)常に同じ姿勢で同じ鞍の位置に座り続ける」ことに最も気を配れという。これができるまでは、「身体を柔らかく随伴して反撞を抜こう」などというのは有害な考え方だという。つまり、馬が加速したからといって後ろに取り残されたり、馬が減速したからといって前につんのめったり、弾むたびに前後左右あちこちに尻が着地したり、ということを徹底して無くすことを最優先にして、「弾まないように」などは考えるべきで無いという。

 で、この練習(*1)をひたすらやると、相変わらずドスドス跳ねてはいるが、なんだか騎座が安定してきたように感じることがある。こうなるとハミ受けをきちんとやってくれる馬だと、スッとハミ受けしてくれたりする。すると、馬の背の動きがまろやかになって、ドスドス跳ねていた尻が鞍からあまり離れなくなって、どうやって反撞を抜こうかななどとジタバタしなくても自然となめらかな座りができるようになる。

 なんだか自分の座りの技術が上達したのでなくて、馬が乗り手をバンバンとは跳ね飛ばさない走り方をしてくれたからドスンドスンせずに乗れているだけ。こんなことで良いのかなあと思ったりするが、調教された馬に乗るだけの、乗馬クラブの客としては、それで良いらしい。背中が硬く、乗り手をバンバン跳ね飛ばす走り方をする馬に跳ねないように乗るには「調教する乗り方」が必要で、客が乗る乗り方とはまったく別ものだという。だから、客として乗る分には、そんなもので良いのだと。

*1)立つ・座る・座る・座る、立つ・座る・座る・座る、あるいは 立つ・座る・座る、立つ・座る・座る、などの変則軽速歩を織り交ぜての正座速歩の練習


 ところで、上のような練習過程を経て騎座が安定するにはそこそこ時間(鞍数)が掛かる。対策として、上体を後ろへ倒し後傾して(ただし、骨盤をべったり後ろに倒してはいけない)乗るやり方で、最初のうちからある程度反撞少なく乗る方法もある、。

 馬の上で前かがみになると反撞は大きくなる。鞍はこのアニメのように、前橋側は小さく、後橋側が大きく動く。鞍は横から見ると扇型の上下運動をする。

 このためこのアニメの左側のように前傾すると前方上方へ跳ねあげられる力を上体がまともに受けて空中へ放り出される。こんなに大きく跳ねあげられて鞍と尻が離れてしまうと、落ちてくるときは鞍の上にドスンと尻もちをつく。

 つまり、前傾すると反撞を大きく拾って乗り手の上下動は大変大きい。反撞の大きい馬だととても乗っていられない。

 これをアニメの右側のように思い切って後傾すると、鞍により腰が前方上方へ押し出されても、上体をほうり上げる力にはならず、鞍と尻が離れない。このとき腰は自分で押し出したりせずに、鞍の動きで前後するに任せる。

 この方法はI先生に教わった方法。YouTubeの技術乗馬技術解説でも紹介されている。後傾はいけないとどの教本にも書いてあるが、反撞の逃がし方を体得する実験だから、思い切って後傾する。初めのころは怖いから、自分では後ろへひっくり返りそうなほど傾いたつもりでも脇から見ればたいしたことない。思い切って後ろへ倒そう。

 上体を後ろに倒して腰が鞍から離れないのを確認したら、すこしずつ後傾を直して上体を起こす。するとある角度を超えると尻が鞍から離れ始める。この限界の点まで体を起こして速歩の反撞が体にどう伝わるかを確認する。何鞍かこの練習をすると速歩の反撞がいやなものではなくなる。また、尻が離れなくなる限界の傾きもなれるにしたがって小さくなる(あまり後傾しなくても済む)。

座る位置 反撞を抜くへ このページ先頭へ 腹帯の締め方へ

 鞍に跨って座る位置は、鞍壺の一番深いところへ坐骨が落ち着いて、坐骨の前後の圧迫感が等しくなるような位置。

 この位置の確認の一つの方法として、下のアニメのように鞍に跨って足を曲げずに前後に振って、足を後ろに振ったところで止めると、そのときの腰の位置が正しい位置。ちょっと前よりじゃないの?というような感じの位置。

 鐙は鞍の前橋に跳ね上げておいて、足をぶらぶらにさせておいてやる。

 股をできるだけ広げて、脚が鞍に接触しないようにして、膝を曲げずに脚をまっすぐに伸ばした状態で、前後に大きく振る。左右の脚を交互に振るのではなく、両脚を揃えて同時に前後に振る。

 なんどか振って、自然な感じで振れたら、脚が後ろに振れた位置で脚を止めてみる。腰がぐっと起きて、臍がやや前に出た感じになるが、そのときの尻の位置が座るべき正しい位置。


腹帯の締め方 座る位置へ このページ先頭へ 鞍上でのチェックポイント

 腹帯は 少し歩いたり運動した後で 締めなおす。

 乗る前に締めておいても、鞍に人の重みがかかり運動によって鞍が馬体にしっかりなじんだ後では 腹帯は乗る前よりも緩くなる。緩みを直すため、乗ったままで腹帯を締めなおす。自分で絞めるのがうまくいかないときは、インストラクタに腹帯の締まり具合をチェックしてもらい緩ければ締めてもらう。

 自分で締めなおす場合は 馬を停止させてから 左右どちらかの足を前にずらせて 鞍のあおり革をめくって腹帯のバックルを露出させる。バックルから余っている革をギューと引き上げて締める。このとき強く締めすぎると馬は嫌がって暴れて、乗り手を振り落とそうとする。馬がいやがるのは、肢をばたつかせ気味にしたり雰囲気で判る。このとき「我が儘いうな」とばかり締め上げると馬は暴れ出す。暴れ出すほどの悪い記憶を馬に残すと、鞍着けを嫌がったり、腹帯を触られるのを嫌がる扱い難い馬にしてしまう可能性がある。乗って締める方が、地上から締めるよりずっと大きい力がでるので、力の入れすぎには要注意だ。

 腹帯を右側で締める場合は、

右脚を前に出して、あおり皮をめくり、

腹帯を留めているバックルに手を伸ばし、腹帯の留め皮を強く上にひっぱりバックルのピンを外す。
 そのピンを人差し指で抑えながら さらに強く上に引っ張って腹帯をきつく締める。
 ギュッと締まってピンがベルトの穴に入り込んだときに手を緩めて引っ張っていた革を下に下ろす。


鞍上でのチェックポイント"> 腹帯の締め方へ このページ先頭へ 馬に合図を送るタイミングへ
 馬に跨って馬場にでたら、まず姿勢をチェック。教本などに書いてある「体の力を抜く」というのは、肩や腕などの無用な力を抜くということで、腰から力をぬいてぐにゃぐにゃに柔らかく乗れということではないことに注意。

姿  勢 真っ直ぐ上に背伸びしている? ・背骨は自然なS字、決して臍は引っ込めない。

・腰にはしっかり力をいれて腹筋、背筋で腰と腰椎を支える。

よく判らなくなったらまずは馬上で真上にグッと背伸び。それだけでほぼ正しい姿勢になる。
膝で鞍を固く抱え込まない 鞍の上で膝をガバガバと動かし、膝の力はぬいてグラグラに

 馬が走り出したりすると、落ちないように膝で鞍を抱きがちになので要注意。
肩から力を抜く  胸を開いて、肩甲骨を背中でお互いに近づけ、肩を上下にガクガク上げ下げ。

 乗った最初だけでなく、乗っている間中常に肩の力は抜いて、胸を張る。
手  綱 拳は縦に、ややハの字に持つ。ただし、CRではまっすぐ立てて、特に前腕の骨(尺骨と橈骨)は捻じれずに、まっすぐ上下になっているべきと言っている。  親指は力を込めてしっかり握り、薬指・小指はゆったりと手綱を持つ。

 拳の間隔は真っ直ぐ張った手綱が馬の首に軽く触れる広さ。首の手綱の間が空いても、きつく当たって手綱が折れ曲がってもいけない。 

前後の位置は鞍の前橋のやや前の上あたり。

手の甲が上を向くような持ち方(左の下の絵)はNG。これは「ババ掴み」といって馬鹿にされる持ち方。
鐙は前足底のややかかとよりで踏み、親指側で重さを支える。 ただし、CRでは指の荷重は全部同じであるべきと言っている。小指側に掛けたほうがつま先が開きにくいので、均等が正しいのかも。靴の中で足の指は何かを掴むように曲げずに、広げて曲げ伸ばしして柔らかくしろと言っている。

土踏まずまで深く足を鐙に突っ込んではNG。
踵をしっかり下げて足の重さを全部鐙に掛ける。  つま先が下がっていてはいけない。

 うまく鐙が踏めないなら、鐙革の長さを調整。

 こちらには、初心者にありがちな悪い姿勢の実例と、それをどうやって矯正するか具体的な方法が動画で紹介されている。とても役立つ必見の動画だと思う。解説は英語だが、英文字幕もあり、画像の助けで何を言っているかは想像がつく。こちらをクリックしてご覧ください。ちゃんと乗れるようになるにはとにかく練習、練習、練習あるのみ、でも楽しんでやりなさいと励ましてくれている。

馬に合図を送るタイミング 鞍上でのチェックポイントへ このページ先頭へ 左右へ曲がるときの姿勢へ

 鞍に跨って姿勢をチェックしたら馬に合図を送って動いてもらう。ただし、機械ではないから、ボタンを押したらすぐ反応という訳にはいかない。生き物だから、それなりの準備がいる。

 事前準備の必要性と効果についてのH先生のレッスン。

 (1)馬は止まっている。「では、そこから右に曲がるときどうやりますか?」と先生。「どうって?そりゃぁ、こうやって手綱を右へ、、、」と私。「ほらぁ、そうやってすぐに右に曲げようとする」と先生のお叱り。馬は前に進んでいないと曲がれない(前肢旋回などその場で回ったりしますが)ということ。前に進ませてから曲がるように誘導しなさいと先生は言う。なるほど。

 (2)馬は歩いている。「はい、速歩を出して」と先生。ギューっと脹脛で馬腹を圧迫。2-3秒して速歩で走り出してくれた。「ほら、時間が掛ったでしょう」と先生。「今度は、手綱を控えておいて。舌鼓を使って」と先生。ちょっと手綱をブレーキ気味にしておいて「チッチッ」と舌鼓を使う。馬の耳がこちらを向く。「はい、脚を使って」と先生。こんどはたいして時間をおかずにスッと速歩がでた。「どうです」と先生。馬にこれから何かするよと伝えておいて身構えさせてから扶助を送るとサッと反応してくれるらしい。

 舌鼓によって馬は「これから何かされるな」と準備する。

 また、馬が乗り手に集中していなければ、乗り手の合図は馬に伝わらない。近くに見慣れぬものがあったり、なにか音がして、馬がそちらに意識を集中しているようでは扶助は迅速には伝わらない。そのためにも、舌鼓や半減却、あるいは手綱を多少控えたりして、馬の意識を乗り手に向けさせる。

 まとめると、
(1)馬の意識を乗り手に集中させる。そのために舌鼓や半減却、あるいは手綱などで、馬に注意をうながす。
(2)馬が扶助に反応するには多少なりとも時間が掛るということ計算にいれて、たとえば、曲がらなければいけない地点の手前から曲がる指示をだすようにする、
ということを常に意識して扶助を行う必要がある訳だが、RRを読んでいたら以下のようなもっと役立ちそうな説明があった。


RR(リアルライディング)での説明

・馬は驚かされるのを嫌うから、最初にイメージしてそれから要求を出す。
 扶助で馬を驚かせるとうまく反応しない。予告は馬にも乗り手にもプラスに働くという。イメージを持てば乗り手の体が無意識に反応して、馬に予告を出すことになる。
 
・要求を出す2-3秒前に意識する。
 馬は乗り手の思いを感知して反応することに優れているから、馬に何かを求めるとき、最初の扶助は「あなたの思い」だという。

上のようなことはとても効果があるとRRは主張している。また、RRに書いてある以下のコメントはとても面白い。

 脚で必死に前進の扶助を出しているのに馬が一向に前進気勢を強めてくれない場合、往々にして乗り手は「心の奥底では、馬が勢いよく前に進むのが不安」なのです。馬は人の潜在意識に驚くほど敏感なので、たいていは親切にも乗り手の願いを聞き入れ、頑張らないでおこうと思うわけです。騎手が本気で自由な前進を意識すれば、馬はもっと前に動くでしょう。 それは時に、単純に前を見るだけです。前を見て一緒にどこかへ行くという態度を馬に示してあげるのです。逆に下を見れば、馬はあなたが今いる場所に留まりたいのだと判断して、動かないことであなたの要求に従います。

左右に曲がるときの姿勢 馬に合図を送るタイミングへ</a>
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 曲がるとき、どうしても曲がる先が気になって回転内側の地面をみる。
すると 背中がまるまって 前かがみになり安定した乗り方ができなくなる。
どうしても、この癖が取れないときは、回転外側の耳の辺りを見るとまっすぐに向けるし 前かがみになることも防止できるとH先生は言う。

 ただし、このやり方はH先生独特の、ある意味非常に偏った考え(インストラクター経験?)に基づいていて、他のどんな先生もこういうことを言わない。なので、以前に紹介していたやり方は削除した(2022年)。

 RRでは、「(曲がるとき)体重をつかうとか、内方脚を使うとか考え混乱する人がいるが、間違いではないが、誤解されている。回転のときに使う体重はごくわずか、回転の間もできるだけ中心に座るよう努めよ。内方脚で静かに段を降りることをイメージする」のが良いと言っている。たしかに、このイメージは解りやすく効果的だ。


 ドイツ式の馬術教本というのを読んでいたら、曲がるときの正しい姿勢として下の絵のような意味の紹介がされていた。H先生の教えとちょっと違うが、どうもこちらの方が正統らしい。


 乗っている人の腰の線と馬の腰の線は平行。つまり人の腰と馬の腰は同じ方向を向く。
 人の肩の線と馬の肩の線も平行。人と馬の肩の方向は同じ。

 なるほど、という気はするが、馬の腰の向きは見えないからこれを実践するのは難しいように思える。
 敢えて言えば、腰の向きは結局は馬の回転外側の耳を見る向きとほぼ同じ方を向けといっており、肩は馬の肩よりも内側に向けてはいけないといっているのだと思えば、H先生の教えと同じかもしれない。


  CRには、頭だけを回転方向に回さないように、胸に目がついているつもりで、胸の目で回る先を見ろと書いてある。H先生がやかましく曲がる方を向くなと言うのは、あくまで曲がる方を向くと私の体がそちらに傾くからであって、他のどんな先生も皆、曲がる方向を見ろという

 CRには曲がるときの上体の姿勢としてしたのような紹介がある。

 まず馬上で腕をまっすぐ真横に伸ばす。上半身を床屋のクルクル回る広告塔のように左右に回す。頭と肩は同じに回して、回り方に違いがあってはいけない。
 次にこの腕をやや曲げながら肘を脇近くまで降ろして、ちょうと両手で胸の前に大きな玉を抱えているようなポーズをとる(上の絵)。上を向けた両手はき甲の上近くに置く。この体勢で上と同じように体を回す、ただし、右に向いたときに左手がき甲の上を超えてはいけない。
 こうして、右を向いたときの姿勢が右に曲がるときの上半身の姿勢。ただしアニメでは肘が脇から離れているが、手綱を持ったときは肘は脇に引きつけておく。

 アニメから判るように、右に曲がるから右を向くといっても、ほんのわずか。また、決して傾いてはいけない。

 M先生も、曲がるときは手綱をどうこうあまり考えず、両肘をしっかり締めて、両手をそろえて回転内側方向へ移動させるのが、一番簡単で間違いないと言う。


・曲がるときの馬の姿勢(馬首の方向)

 曲がるときは乗っている人の姿勢も大切だが、馬の首の方向を正しく曲がる方向に向けることも大切。

 まっすぐ直線運動をしているときは当然馬の首も真っ直ぐ前を向けなければいけない。で、曲がるときは初心のうちでも曲がる方向に馬の首を向けるから、こんな注意事項は「いまさら」というものだが、意外といい加減になっている場合がある。

 たとえば、馬の首を回転方向に向けると馬が騎乗者が意図しているよりも曲がりすぎてしまう、といった場合「そんなに急に曲がるなよ」と、馬の首を馬が走っている曲線上よりも外を向けてしまうことがある。こうやることで意図通り馬の回転半径が大きくなって、首が向いた方向に進んでくれれば良いが、体重や脚による扶助が適切でないと馬の首が外を向いて回転をする場合がある。こういうことに鈍感に乗っていると、馬の首を進む方向の線上に乗せることが疎かになる。

 また、下の絵のように隅角を回るときはほかに進む方向がないので左側の絵のように馬の首が右を向いていても左に曲がってしまう。

 こうしたことに鈍感になって、馬が回転外側を向いて曲がることを放置した乗り方をしていると障害を跳ぶときなど危険。曲がるときは必ず馬の首が曲がる方向を向くように開き手綱などで誘導。


 上の左側のように馬の首が右を向いたまま左に曲がることがあるが、これはNG。
 右側のように、馬の首は回転してゆく線上に沿って回転方向に向けなければいけない。


・悪い姿勢の矯正方法

・悪い姿勢 その1

 この絵は右に曲がる場合を後ろから見た絵。

 右側は悪い姿勢で、右に曲がるときに右下の地面を覗き込んで前かがみになっているうえに、上半身が振り子のように腰を中心に右に振っており、肩の線は赤い円弧の矢印のような動きをしている。これは絶対にやってはいけない姿勢だとH先生は言う。

 こうやると、場合によってはお尻が反対の左に振られるので、体重は左に掛かったりしてしまうこともある。馬にとっては手綱は右に引っ張られ、乗り手の体重は左という矛盾したことになってしまうわけで、とても悪い姿勢。

 左側の絵は、上体を右に寄せているが、このような姿勢で右に体を移すのはまだ許せる範囲だと先生は言う。


・悪い姿勢 その2 バイク乗り(自転車乗り)

  H先生は「バイク乗りは馬乗りが絶対にやってはいけないこと」だと言う。バイク乗り自転車乗り)とは、バイクや自転車に乗って曲がるときにバイクや自転車の傾きに合わせて体を回転の内側に傾けて、曲がるときの遠心力に対してバランスを取るもので、日常生活ではごく普通にやっていること。ところが、馬に乗った場合は、これを絶対にやってはいけないとH先生は言う。しかし、これはどうも少数派の意見のようだ。

  下の絵は、いずれも右に曲がる場合を後ろから見た絵。

典型的なバイク乗り(自転車乗り)  遠心力に対抗して馬と一緒に回転内側に傾いてバランスをとる。

 これをやると、直線運動にもどったときにも体を真っ直ぐに戻せず、体が撚れたままになるから、初心者には厳禁だとH先生は言うが、他の先生はこういう注意を言わない。
バイク乗りのもっと悪い例  このように上体を傾けると体重は却って回転の外側に掛ったりしてきちんと回れない。

 注意していないと、こんな悪い姿勢になってしまうことがあるようだ。
これは良い例  遠心力に負けないように腰の力で体を真っ直ぐに保つ。

 体は正面を向けておいて、顔をやや回転外側に向けると良いというのは先生の教えだが、世の中の大部分の指導者は、顔は進行方向へ向けろという。

 ドイツ馬術とか古典的馬術を見ていたら、上の絵のような「自転車乗り」を正しい姿勢として紹介している本が多くある。みんないかにも古い(写真や図説が少なくイラストが古めかしい)もののように思えるが、自転車乗りというのは絶対悪のような悪い乗り方ではないらしい。

 H先生も「素人は傾けた体をサッと素早くもどせない。だから自転車乗りをやると、回転が終わって直線になっても(あるいは逆方向に曲がるようになっても)体勢を正しく戻せないから駄目だ。プロは体をサッと戻せるからいいんだけど」と言う。馬術書はプロ級を目指す人を相手に書かれていて、プロ級の人はサッと体を戻せる、ということで自転車乗りが正しい姿勢として紹介されているらしい。

 まあ物理学的に見てもバイク乗りの方が自然。CRでも常にまっすぐ乗れと書いてあるが、回転時に遠心力に対抗して馬が傾く傾き以上に傾いてはいけないと言っており、馬の傾きに合わせて乗り手が傾く(中心を合わせる)ことはOKとしているようだ。


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