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 速歩は、右前肢と左後肢(右斜対肢)、左前肢と右後肢(左斜対肢)がペアになってほぼ同時に離・着地する「斜対歩」と言う走り方。けっこう上下左右の反憧が大きく、この歩様で安定して乗っていられれば初心者レベルは卒業。

速歩 はやあし
速歩の歩様 速歩の発進・停止
軽速歩 rising trot 軽速歩の手前
手前の変更 正座速歩
曲がり方
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速歩の歩き方
 この走り方は、右前・左後、左前・右後の肢がそれぞれペアになって交互に離・着地する「斜対歩」という肢運びの速歩。普通に速歩といえば、この「斜対歩」の速歩。離・着地の間には4本の肢が全部空中に浮く期間がある。

 対角線上にある肢がほぼ同時に交互に動くので、重心の位置は常足のようにはあちこち動かない。馬の頭も常足のときのような動きはせず、胴体にほぼ固定されて首を振ることはしない。このため鞍も上下にほぼ平行に動く。馬体の上下動についてはこちらも参照。

 別の肢運びとして、右前肢と右後肢(右側対肢)、左前肢と左後肢(左側対肢)がペアになって離・着地する「側対歩」という走り方もある。日本の古馬術では「側対歩」。馬の肩と尻が上下左右に平行に動き、シーソーのように大きく波打つことはないから、鞍は非常に安定しており乗り易いのかもしれない。こちらのビデオを見ればどんな走り方かは判る。側対歩をもっぱらとする馬(スタンダードブレッド standardbred)は訓練されれば、普通の乗用馬の斜対歩の襲歩よりも早く走れるという。

 反動(反撞)を騎乗者が馬上で立ったり座ったりして抜く乗り方を軽速歩(rising trot あるいは posting trot)といい、馬体の上下動にまかせて座りっぱなしの乗り方を正座速歩(sitting trot )(または単に「速歩」)と言う。正座速歩は反動(反撞)を抜くのが難しい。軽速歩は立ったり座ったりで反動(反撞)を抜くのは比較的楽だが、立つ座るに脚を使う分、脚によるいろいろな扶助をするのが難しい。

速歩の発進・停止 速歩の歩様へ このページ先頭へ 軽速歩へ

 速歩への移行、速歩からの停止の場合、いずれの場合も両脚で馬腹を圧迫することに加えて、手綱による扶助を併用する。発進の場合は手綱を譲り、停止の場合は手綱を控える。

動作 扶助の方法 脚による扶助 手綱による扶助
停止、常足からの速歩発進  体重をやや後ろに掛け、両脚の脹脛上部で馬腹を、常足発進の場合よりも強く圧迫。手綱は譲る。

 これでダメな場合は鞭を使って速歩を出す。速歩を出すまで扶助はより強く続けて、途中で諦めないこと。
 両脚の脹脛上部で馬腹を強く圧迫。

 圧迫でダメなときは踵で馬腹を軽打。それでもダメなら鞭の助けを借りる。
 馬の首がやや前に出て前進気勢をしめしたときに手綱を前に譲る。
速歩から常歩への移行  姿勢をただし、馬上で背伸びするようにして、両脚の脹脛で馬腹を圧迫、同時に手綱を控える。

 常足に落ちたらすぐに、脚による圧迫を止め、手綱を譲り、停止してしまわないように注意。停止しそうなら脚による圧迫は継続。
 両脚の脹脛上部で馬腹をギューと圧迫。  脚を使うと同時、あるいは、脚を使った直後に、手綱を控える。
速歩からの停止 上と同じ。ただし、停止するまで扶助は緩めない。  両脚の脹脛上部で馬腹をギューと圧迫。  手綱は脚を使うと同時にしっかりと控える。
手綱は引っ張らずに、ヘソを拳に近づけるつもりで拳を固定する。

・発進の場合の注意点

 大事なことは、「さぁ行くぞ」と勢い込んで前かがみにならないこと。馬は後肢で推進力を出すので、発進のときに人の体重が後肢側に掛かっている方が発進しやすい。上体をしっかり背伸びして前かがみにならないようにしておいてから両脚でグッと馬腹を圧迫。初めのうちは後傾していると言われるんじゃないかと思うくらいでかまわない。

 きちんと調教された馬だと、発信の脚の扶助と同時に腰を張ることで、前進気勢のしっかりした発進をしてくれる。

 せっかく速歩を始めたのにちょっと走って停まってしまうことがあるが、これは多くの場合 手綱でバランスを取ろうとして無意識のうちに手綱を引っ張っている場合がほとんど。

・減速・停止の場合の注意点
 減速・停止するときは拳を譲るのを止めて、抵抗を与えてやればよい。半減却を使えとか本には書いてある。

 この半減却によって、馬の後肢を踏み込ませて、発進ならその後肢で地面を蹴らせて推進力をださせて前に進ませ、停止ならその後肢の踏み込みで背中をまるめさせて、停止によって掛かってくる人の重さを楽に受け止めさせてやる、ということで、発進・停止どちらの場合も後肢を踏み込ませなくてはいけないということで発進も停止も同じような脚の使い方になる。

 手綱は引っ張らず、腹を前にやや押し出すようにして手綱を持つ拳を腹にしっかりと近づけて固定する。このとき顎も引くと前かがみになるので顎はむしろやや前に出し気味にする。

 停止の場合、止まらないうちに扶助をやめてはいけない。拳を控える左右の力のバランスが崩れていると馬は曲がってしまうので、左右の拳を控える力を同じに保つ。速歩から常歩を経ずに停止させる場合は、だらだらと常足に落ちて歩き続けないように、手綱をしっかりと強固に控える。下の「発進停止の練習」をやることで、速足から常足を経ずに停止、停止から常足を経ずに速歩の扶助の要領がなんとなく解ってくる。

・発進停止の練習
 速歩あるいは軽速歩で走っている状態から、両脚による圧迫、拳を控えて手綱を控える扶助を同時に行って馬を停止させる。停止したらすぐに、発進の合図を送って速歩あるいは軽速歩に復帰。これを繰り返して、発進、停止の要領を覚える。

 なれないうちはもたもたするが、だんだんとスムーズに停止、発進できるようになる。

軽速歩 ( rising trot ) 速歩の発進・停止へ このページ先頭へ 軽速歩の手前へ

軽速歩
 馬の上下動にあわせて馬上で立ったり座ったりすることで上下動の反動を吸収する乗り方。
 英語では、鞍に座りっぱなしである正座速歩の sitting trot に対して、立つ座るの立つ動きに注目して rising trot あるいは posting trot と言う。

 軽速歩は、調馬策で常歩を多少習ったら、すぐに(習い始めて最初の一鞍目、あるいは数鞍目ぐらいから)教えてもらう技術。軽速歩は揺れる馬上で、積極的に体を動かして、立ったり座ったりしなければいけないから、乗馬を始めて最初に教えてもらう技術らしい技術。

 これを習うときは、馬の足運びに合わせて、インストラクターが1、2、1、2と声を掛けてくれるから、声に合わせて1で立って、2で座るを繰り返す。勘の良い人は生まれて初めて馬に跨っても、立つ座るだけならできてしまう。

 但し、始めの内はどうしても、座る時にドスンと鞍に尻餅をついてしまう。軽速歩は、馬にも乗る人にも疲労が少ないといわれているけれど、乗り手が座る度にドスンドスンと鞍に尻餅をつくと、馬の背には大きな負担が掛かる。

 軽速歩の練習では以下のことに意識を集中しよう。

(1)立つ座るのリズムが馬の歩調と同期していること。
 立つ座るだけにばかり気を奪われていると、タイミングが合わず尻が鞍と衝突してしまう。これでは、馬の背に優しいという軽速歩の価値がない。

 座る時、下方へ落ちる尻が、下方へ沈み込んでいる最中の鞍と接すればOK。これで衝突感もなく、柔らかく尻と鞍がくっつくのが実感できるなら、馬の歩調と立つ座るが同期している。

 ただし、このように実感できても、立つ座るの時間が同じになるように注意が必要。どうしても立つ方に意識が行くので、立っている時間が長くなりがち。立ったところでホッと一休みしないで、すぐに座る感じにした方がよい。「さあ立つぞ」「はい、立った」「じゃあ座ろう」でなく、この「はい、たった」という部分を省略する感じ。自分ではなかなか判らないので、インストラクターにチェックしてもらうと良い。

(2)立つ座るの動作で上体や脚ががぶらぶら揺れず安定していること。
 立つ座るに応じて手綱を引っ張ったり緩めたりせず、手綱にかかる力を一定に保てなくてはいけない。鐙に頼って立とうとすると、足を踏ん張って立とうとしたときに脚が前に投げ出されたり、座ったときに脚位置が低くなることで脚が前に突き出されたりする。上級者は立つ座るの動作を行っても、脚の位置が一定でぶらぶらしない。

 立つ座るに応じて脚が勝手にぶらぶらするのは、脚を扶助に使うことができないとうことで致命的。下の(3)を強く意識すると、脚のブラブラを軽減できる。

(3)座るときに鞍に尻を付けない
 最初は「尻を付けるななんて無茶言うな」という感じだけど、尻を付けないように意識していると、脚も安定して、上体の安定も改善される。どうも上手く出来ている感じがしないなあというが場合は、「尻を鞍に付けないように」とだけ意識すると他のことも上手くいった感じになることがあるので、試してみると良い。

・軽速歩の立ち方
 足を踏ん張って足の力で立とうとする立てない。馬体の上下動で体が跳ねあげられる力を利用して前方に立つと楽。ただし、完全に跳ね上げられる力に頼ると立ち遅れになる。腰を前方に出すように立つと跳ねあげられる力を使わなくても楽に立てる。


(A) 真横から見て、騎乗者の重心と踵が縦一直線になるのが正しい騎乗姿勢。ところが、この姿勢から足の力を使って立とうとすると、(B)のように足が前方に放り出されて体は後ろに倒れて鞍の後橋で尻を支えないと立てない。

 鐙は鐙革托鐶につながれてブラブラだから、重心が踵にあるのに鐙を踏ん張れば、物理的に当然ながら鐙は前方に振れる。乗馬のFAQによくある「軽速歩で足が前方に突き出してしまいます」という状態になる。

 姿勢を前方に倒して重心を鐙の真上に持ってこない限り、立とうとすると、必ず足は前方に投げ出され体は後傾する。

 こうならないためには(C)のように上体を前に倒して重心を鐙の真上に持ってこなければいけない。(C)の絵のように、重心が鐙の真上にあれば、足の力でゆっくりと立ち上がることができる。これなら足は前方に振れたりしない。

 しかし、実際の軽速歩では馬は動いており、馬体は上下に動く。この上下動を利用して立ち上がるようにすれば、上の(C)のように上体を前方に倒さなくても立ち上がることができるし、(B)のように足が前方へ突っ張るというようなこともない。

 つまり、立ち上がるときは 脚の力を使わず腰を前方にスッと押し出すように立つ。こうすれば、上の(C)のように前傾せずまっすぐな姿勢を保ったまま、立ち上がれる。立ち上がった後では上体は前方へ出ており、重心はほぼ鐙の真上になるので安定した姿勢を保てる。真上でなく前方へ立つのがコツ。M先生のところのインストラクタは、立つとき「腹の前に置いたボールを、腹でポンと前にはじき出す感じ」で立てという。

 この絵はCRに紹介されている軽速歩の練習(棒立ち乗り)の写真を絵にしたもの。

 軽速歩で立ったときに脚が前に突っ張ってしまう人は、この棒立ち練習がお勧めだという。
 「脚がずいぶん後ろへ引かれて、上体が前方へ投げ出されそうに思うかもしれないが、意外なほど安定しているのを発見するでしょう」とCRが言うように、脚が前方に突っ張ってしまう人の意識改革ができるかもしれない。

・軽速歩の座り方
 力を抜いて、重力に任せて体を鞍の上にドスンと落としてはいけない。立ったときとほぼ同様の脚の力を保つつもりでそっと座る。座るとき、「尻を鞍につけてはいけないんだ」と強く意識して練習する良い。

・座る位置
 座る位置は大切で、鞍のどこに座るかによって、「座ったときに尻を鞍につけない」は無理になったりする。

 馬に跳ねあげられる力に頼って立つようだと、鞍によって前に押し出してもらい易くするため後ろ寄りに座っていたりする。
 この絵の尻の位置だと、鞍の後部に尻が押されて楽に立ち上がれるが、これは後ろに座りすぎ
 こんな後ろに尻を下ろすと、必ずドスンドスンと鞍に尻餅を突くが、「尻を鞍につけてはいけない」と意識していないと、この位置が悪い位置だとは気がつかないことが多い。

 尾てい骨からやや上の部分が鞍の後橋のカーブに触れる感じなら、もうこれは露骨に後ろに座りすぎ。


 坐骨を鞍壺に正しく位置させれば尾てい骨の後ろが鞍に触ることはない。
 坐骨がしっかりと鞍にはまるのが感じられ、立つときに鞍の後橋に押し出される感触はなくなる。
 鞍を坐骨の点で感じるから座ったっときに鞍がとても小さく感じる。

 この位置に座れると立つときに無理やり鞍に押されて立つという風でなくなり、立つ座るの高さや速さのコントロールをし易く、上下動の小さな軽速歩も楽にできる。

 座る時に尻を鞍につけない練習としては、鞍壺よりも多少前に股間を近づける感覚でいた方が、習得が速いように思う。

 正しい位置に座れないと、尻を鞍につけない軽速歩というのは難しい。


・悪い軽速歩の例

悪い軽速歩
 この絵のように座った時に臍を引っ込めて鞍にお尻が面でべったりと付くような座り方はダメ。
 座ったときに尻を鞍に付けないというのがまず無理だし、こんな風に「立つ、座る」で背骨をぐにゃぐにゃさせると背骨を痛める。
 座ったときに体をまっすぐ背伸びさせていると、どすんと座る衝撃がまともに背骨にくわえられて体によくないように思えるが、そのほうがしっかり座れて良い。
 また 立った姿勢のときにつま先が下がっているのもいけいけない。

 ところで、乗馬に関するWebのFAQで「軽速歩で鐙に立つと足を前に突っ張ってしまいます」というのをよく見かける。お臍を引っ込めて背を丸めて鞍にまたがっていると、こういうことになってしまうように思える。

軽速歩の手前 軽速歩へ このページ先頭へ 手前の変更へ

 駆足の場合は常に右脚が前とか、左脚が前とか、左右が非対称に動くので手前(lead)という概念がある。常歩や速歩では馬の脚の動きは左右同等なので、速歩の走り方自体には右手前だ左手前だというのはない。下の絵の青い波線は、速歩での馬体の上下動を示したもので、左右の後肢どちらで推進するときも上下動の幅は同じ。

 しかし、馬が回転運動をするときは下の絵の赤い波線のように上下動の幅が左右で異なる。この赤い波線は左手前(左回転)をしているときの馬体の上下動を示したもので、回転内側(左側)の後肢で推進しているときの方が沈み込みかたが大きい。回転するときに主に回転内側の後肢の力を使うためにグッと踏み込みが深くなって沈み込みが大きくなっている。なので、回転中は深く浅く深く浅くというように上下する。

 このため、回転中の軽速歩では騎乗者が、座ったときに馬の右後脚で地面を蹴って馬体が持ち上がり推進されるか、あるいは、左後脚で地面を蹴ったときなのか、という左右の違いが生じる。

 騎乗者が座って体重を馬に掛けているときに右後脚が地面を蹴って推進するのを右手前と言う。騎乗者が座っているときに使う後脚のほうが力が必要だから、たとえば右に曲がって進むときには右後脚(回転内側の後脚)が地面を蹴るときに騎乗者が沈み込んで体重を馬に掛けている必要がある。騎乗者の体重のかけ方が左右正しく行われているとき、「(軽速歩の)手前が合っている」あるいは「正しい手前で乗れている」という。

 立ったり座ったりしているときに左右どちらの後肢が地面を蹴って推進しているかはわかり難いので、前肢の動きで後肢の動きを確認する。右後肢が馬体の下に踏み込んで地面を蹴って騎乗者が立ち上がったときは左前肢が前に出ているので、立った時に見て左前肢が前なら右手前の軽速歩をしている確認できる。逆に右前肢が前に見えたら左手前の軽速歩をしている。だから、円運動をしているときは回転外側の前肢が出たときに立っていれば正しい手前で乗れている。

 先生は、手前があっているかどうかの確認を「馬体から受ける脚への圧力で判断しなさい」と言う。馬体にきっちり脚を付けていると、たとえば右後肢が前に踏み出す時には右脹脛に馬腹がせり出す感触が伝わるという。これは常足のときは馬腹の動きとして初心者にも判る。しかし、速歩になるとそれほど明確には脹脛に伝わって来ない。 これが判るようになると、駈歩発進などで後肢が踏み込むタイミングで合図を送ってなどというのが正確にできるようになるのだろう。

 手前の変更 軽速歩の手前へ このページ先頭へ 正座速歩へ

 この「手前」という言葉は、「lead」を意味したり「回転方向」を意味したり、ごっちゃに使われているようで判りにくい。

 「同じ手前ばかりやらないで、ときには手前を変えて」と言われたら、それは「同じ方向にばかり回らないで、反対向きにも回れ」という意味だから、たとえば、右手前と言われたらそれは右回りを意味したりする。

 軽速歩の場合、回転方向を変えただけで、立つ座るのタイミングを替えなければ、「手前の合った正しい軽速歩」ではなくなってしまう。回転方向を変えたときに、正しい手前で乗り続けるためには、下の図の小さな緑色の山の部分で立ち上がらずに反動にまかせてトントンと二回連続で尻を鞍につけて 後のトンのところから立ち上がって、ふたたび立ったり座ったりを繰り返す。これで軽速歩の手前が変わる。



 「手前が違う」とインストラクタに言われたら、難しく考えずにとにかくトントンとやってから立ち上がれば、手前は修正できる。

正座速歩(sitting trot) 手前の変更へ このページ先頭へ 曲がり方へ

 正座速歩 ( sitting trot ) では馬の上下動で体が自然に上下するに任せる。正座速歩は静座速歩とも、単に、正反撞(せいはんどう)とも言う。静座と正座のどちらが正しい表記なのか不明。「速歩」とだけ言われたら、それは正座(静座)速歩を指すことが多い。

 軽速歩が多少はできるようになると、じゃあ速歩もやってみましょうと習うことになる。立つ座るという作業からは解放されるが、ドンドンと跳ねる鞍に安定に跨がっていられるかどうかが課題。慣れないうちは、反憧の大きい馬だと、どんどん跳ね幅・ゆれ幅が大きくなって、思わず「このままじゃあ落ちる」と思うことすらある。

 正座速歩でぼんぼん跳ね上げられないコツはこちら。思い切って体を後ろに倒すと尻が鞍からあまり離れなくなり反動がゆるく感じられる。最初は体を後ろに倒しすぎくらいにして、ポンポン跳ね上がる度合いを減らして乗り、慣れてきたら体を起こす。ただし、鞍の後橋に寄りかかるほど後ろに座ってはいけない。

 また、踵を下げて軽く鐙を踏んで、洗濯ばさみの要領で、大腿を上の絵のように回して、脹ら脛を真っ直ぐ下に降ろして上の絵のように跨がると、跳ね上げられる度合いが軽減される。跳ね上げられた後、体が落ちるときに、真っ直ぐ降ろした大腿の間を、鞍が滑ってせり上がってくるという感じで、鞍に尻を下ろせば、尻が鞍に跳ね上げられる度合いが減る。

 体が鞍に沈み込む度に、両脚の脹脛内側上部で馬腹を左右同時にギュッギュッと圧迫して速歩(速足)の継続を指示する。ただし、脚の扶助のタイミングは沈み込む度というより、沈み込んでから尻が馬に持ち上げられるときに体が持ち上げられないように脹ら脛で馬体を挟み込むという感覚の方がやりやすいかもしれない。実際、熟達者のオリンピックでのビデオを見ると、体が沈んだ最下点から体が浮き上がるときに脚を使っているように見える。

 手綱は馬の首の動きに合わせて譲り、適度な緊張を保つ。


正座速歩の習得
 上下の反撞の激しい正座速歩でも、落ち着いて鞍に跨がっていられるためには、ひたすら鞍数を過ごして慣れるしか無いけれども、何も考えずにひたすら乗るだけでは、かなり多くの鞍数を経ないと、安定した正座速歩ができるようにはならない。

 以下のような訓練をすると、比較的少ない鞍数で、「ドスンドスン跳ねられて、落ちずにいるのがやっと、脚での扶助など思いも寄らない」という心許ない状況は脱出できる。というか、どうもいつまで経っても正座速歩が苦手だというような場合には、試してみるべきだ。

リズムを変えた軽速歩: 立つ座る-立つ座る でなくて、立つ座る座る-立つ座る座る-立つ座る座る、あるいは、立つ立つ座る-立つ立つ座る-立つ立つ座る、あるいは、立つ座る座る座る-立つ座る座る座る-立つ座る座る座る、のようにリズムを変えた軽速歩を練習する。注意すべきことは、座る時に骨盤が後傾してヘソを引っ込ませないこと。特に、立つ前の「座る」で、お腹が引っ込まないように注意することが大切。ヘソが引っ込んで腰折れ姿勢になったのでは、何の練習にもならない。とは言え、この動画はちょっと腰がおれているなぁ。もうちょっとましなイメージで乗っているんだけど。。。

 徐々に座る回数を増やしてゆくと、座りっぱなしでの跳ね飛ばされる感が、なんとなく無くなってくる。

上下動の少ない軽速歩: 座るときに尻を鞍に付けず、立つときに大きく立たず極く低く立つ上下動の少ない軽速歩から、鐙に掛ける体重を抜いて、すこしずつ尻を鞍に付けて体重を鞍にも移す。尻を浮かせる、尻を付ける、を繰り返して徐々に尻を付けている時間を長くする。

ハーフシートでの練習: 速歩の状態で、ハーフシートで尻を鞍に付けないで乗る。上の「上下動の少ない軽速歩」とは異なるから、軽速歩のように尻が立つ座る的上下動をしないように注意して乗る。徐々にハーフシートの尻をさげて、ハーフシートの前傾姿勢を緩めて、尻が鞍に接するようにし、体重も鐙から鞍に移し、しっかり鞍に座る。数歩走ったらハーフシートに戻し、また、徐々に尻を下げて正座速歩。これを繰り返して感覚をつかむ。

くるぶしの柔軟性を意識する: 上に説明した練習中に、鐙は浅く履いて、踵を真下に落としてくるぶしの柔軟性で脚が反撞にしたがって上下する動きを吸収するように心がける。踵を落とすときは、洗濯ばさみの要領を意識して鞍に跨がる

腕はきちんと曲げて肘を両脇につける: 体が上下にドスドスされないことばかり気にしていると、腕がおろそかになって、反撞でバタバタ動いて、手綱を通じて馬の口に無用な刺激を与えてしまう。拳を下に押しつけるような心持ちで、拳を静定させることに留意して練習する。

曲がり方 正座速歩へ このページ先頭へ

 曲がるときの脚の使い方や手綱の使い方は基本的にはほかの歩様の場合と同じ。やはり、手綱での誘導よりも脚による指示を主にする。

右へ曲がる・手綱
手綱は開き手綱を使う。例えば、右に曲がる場合は右手を右に開いて馬の首を右に誘導。

 反対の左手は馬の首の曲がりに応じてやや前方へ出して引っ張り過ぎないようにする。左の手綱で壁を作れといわれるが、左の手綱で馬の首をギュッと圧迫する必要はなく、手綱が馬の首に接触している程度でよい。

・脚
 右に曲がるときは右足のももを時計周りに少々ねじり脹脛をやや前にだし、出した位置で脹脛の内側上部で馬腹を圧迫。回転内側の足で馬腹を圧迫して右に曲がることを伝えると同時に馬の推進力を保つ。

 隅角を曲がるようなときは、強く一度、輪乗りのようなゆったりした円弧のばあいは、ギュッ、、ギュッ、、と時間を空けてリズミカルに圧迫。

 回転外側の脚(左脚)はやや後ろへ引いて馬腹に密着させて抑える。先生は腿から脚全体を後ろへさげろと言う。股関節が固いと結構骨がおれる。


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