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 馬という意思ある生き物に乗る限り、落馬の可能性はゼロには絶対ならない。馬が足を滑らせたり、骨折したりして転んだりすることは防ぎようが無い。でも、落馬の可能性を減らすことはできるのかも。

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乗馬は危ない? 乗馬の危なさは、スキーやマウンテンバイクなどと同じ程度(に安全/危険)だと思うが、馬という生き物が絡んでくるぶん不確定要素が増える。

 馬に乗っていろいろするんだから、乗り手がついていけない急激な動きや、転んだりという危険なことを馬にされなければ、安全。

だから、乗馬の危険度は、

乗る馬の安全度でほぼ決まる。

・安全な馬:
  - 扶助や外界の刺激に対して緩やかな鈍い反応しかしない。
  - 乗り手を放り出すような急激な動きをするほどの俊敏さと力がない。
  - 経験豊かで物事に動じない。

・危ない馬:
  - 神経質で扶助や外界の刺激に俊敏に反応する。
  - 激しく力強く動ける。
  - 物事に未経験でパニックになりやすい。

 安全な馬の特徴はおおむね高齢馬に当てはまるから、初心者には高齢馬をあてがわれることが多い。けれども、「こんなノタノタしたのでは面白くない。やはりサッと機敏に動いてくれなくてはいやだ」とか「そろそろ競技会にも出てみたいけど」とか言い出すと、危ない馬に当てはまる特性を持つ馬に乗ることになる。

 それに、生き物だから本来は安全な馬でもその日の調子とか、機嫌によっては安全でないこともある。

 しかし、いくら安全な馬でも乗り手がバランスを崩しやすかったりすると、馬のちょっとした不規則な動きで落ちてしまうから、当然

乗る人の技量も乗馬の危険度を決める。

危ない人:
  - 馬上で身体を真っ直ぐに保つバランス感覚が悪く、崩れた体勢を元に戻す俊敏さと力に欠ける人
  - 落ちそうになって怖がりパニックになる人は、乗り手の恐怖が馬に伝わって、馬もパニックになるので一層危険。
  - また馬の性質を知らない人は、知らないうちに馬を恐怖に落とし入れて、馬に危ない動きをさせてしまうから危ない。

安全な人:
  - バランス感覚が良く、姿勢が崩れない、万一崩れても俊敏に元に戻せる人。
  - 馬を良く知り、馬上でなにがあってもパニックにならず、落ち着いていられる人は、馬を落ち着かせて暴れないように抑えられる。

 だから、馬上で正しい体勢を保つための身体能力を高め、馬とはどういう動物かについて知識を高めておきたいものだ。

 ところで万一落馬しても、下がクッションになるような柔らかく深い砂地だったりすると、大怪我はしなくて済む。上手く保護具(プロテクタなど)が働いてくれたら怪我の程度も軽いかも知れない。だから、

乗る環境と安全装備でも危険度は変わる。

危ない環境:
  - 下が岩やカチカチに固い地面(外乗など)、
  - 障碍飛越など馬自身が転んだり急停止などの危険な動きをする可能生が高い環境。
  - 馬を脅かせる事物が周囲にある環境も当然危険。外乗などだと、傍らから野鳥が飛び出したりする。

安全な環境:
  - 下が適度な弾力をもった整地(馬が転ぶ可能生が少なく、落ちてもクッションになる)、
  - 馬を脅かせる事物が取り払われている環境。

危険な装備:
  - ヘルメットやプロテクタを着けないことは危険に身をさらす行為。特に、頭の損傷は致命的だから、ヘルメットなしは自殺行為といっても良い。

安全な装備:
  - ヘルメットと適切なプロテクターを着用。保護具で怪我を完全に防止することはできないけれども、着けないのは論外。


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 よくある落馬パターンは下に挙げたようなもの。

・急カーブ/急停止(水平方向G)


 障害の直前で急カーブ、あるいは急停止、乗っていた人はこの動きについてゆけずそれまで走ってきた方向に放り出される。よくある一本背負いを食らうパターン。
 障害でなくても、森林・野原の外乗で横合いから鳥などが飛び出し馬が驚いて横に突っ走る。あるいは、馬が暴走して馬場を突っ切り柵や壁にぶつかりそうになって急カーブするなど、急カーブで落ちることは非常に多い。

 急カーブされると判っていたら馬の動きに合わせられるかもしれないが、どうだかなぁ。カーブされたら落ちてしまうほどスピードが上がる前に抑えないとどうしようもないことが多い。

・突然跳ね飛び走り(縦横Gミックス)

 普通に駈歩や速歩などをしていたものが、突然何かに驚いて飛び跳ね駆け出す。そのため乗り手は前後上下の加速度を受けて落ちる。とくに上下の飛びはねが大きいと落ちずに頑張るのは難しい。おまけに曲がられたりしたらお手上げ。

 馬が驚く原因は、突然の大きな音、見慣れぬ物、相性の悪い他の馬に近づきすぎた、などなどいろいろ。この馬は大丈夫だなどと油断して乗っていると、簡単に落ちてしまう。

 障碍飛越で落ちる場合を除いては、馬場内ではこれで落ちるケースが一番多い。馬が乗り手に集中するようにしておけば、他に気を取られてそのために驚くということは減るだろうが、これはかなり上達していないと無理なので、初心者は馬がビビりそうなところには近づけないようにするくらいしか対策がない。

・衝突

 馬が立木などの障害物にぶつかって、乗り手もこれに激突。落ちなくても怪我をするから大変危険。馬がぶつからなくても、このアニメのように乗っている人だけがぶつかる場合もある。

 馬は障害物を避けるだろうと考えてはいけない。立木だろうが、他の馬だろうが、自動車だろうが突っ込んでぶつかることはあり得る。(だから暴走馬の前に立ちはだかって、これを止めようなどは自殺行為)

 外乗では馬が木立や茂みに駆け込んだりすることもあるので要注意。とにかくぶつかったら危ないものの方向に向かって走らせないこと、などと言ったら森林外乗では走っちゃいけないということになるなぁ。。。

・跳ね跳び(上下方向G)

 このアニメのようにその場で跳ねるならまだましだが、大体は、走りながら、急カーブをしながら跳ねるので、放り上げられて落下するところに馬がいないことが多いので、ベテランでも簡単に落ちる。

 馬が背中に違和感を感じたりして、とび跳ねたりしたとき、最初のとび跳ねは小さくても、これで乗り手が馬の背にドスンと落ちたりすると、この衝撃に驚いて、パニックになってまた飛び跳ね暴れる。背中に感じる違和感が無くなるまで暴れ続ける。

 こちらには飛び跳ねて人を落す馬が紹介されているが、対策としては片方の手綱を無理やり引いて首を捻じ曲げて跳ねさせないようにしろ、といっているが、まずはそんな馬からはさっさと降りろといっている、でないと死亡事故などにもつながりかねない。なかなか興味深いビデオで一見の価値があると思う。

・立ち上がり(上下方向G)

 立ち上がるだけなら、せいぜい乗り手は後ろにずり落ちるくらいだが、立ちあがった馬の手綱を乗り手が引き続けると馬はだいたいはひっくり返る。

 馬といっしょにひっくり返るととても危険だから、馬が立ち上がりそうになったら、前進させて立ち上がる余裕を与えてはいけないとどんな本にも書いてある。とはいえ、こんなのを見せられるとどうしようもないとしか思えない。立ち上がるような悪い癖のある馬には乗らないことが、安全のためには一番大事。

・転倒(人馬転)

 肢を滑らせたり故障(肢の骨折など)したりして転倒し、乗り手を落したり、落ちた人の上に転がって乗り手を押しつぶす。

 障害飛越のときに障害に肢をひっかけて転ぶ場合が多いが、障害でなくても、馬が転ぶことは珍しくない。肢がすべりそうな危険なところには踏み込ませないなどで多少は回避できるが、普通に走っている最中に肢を骨折することもあるから、転ぶ可能性はゼロにはできない。これを心配し過ぎると乗れなくなる。

・躓き
 馬が躓くことは珍しいことではない。雨上がりで馬場がぬかるんでいたりしたら、結構躓く。ちょっとした躓きならあまり問題ではないが、時には前肢が折れ曲がって膝を着くような躓きもある。こうした躓きをされたときに、馬上で前屈みになって乗っていると簡単に前横に転がり落ちる。

 下の絵の上側はそんな例。上側は前屈みで乗っているので、馬が躓いて首を前前方に伸ばしたときに、前屈みだから抵抗できずに持っている手綱で前方へ引き倒される。おまけに馬の肩は1m以上はガクンと下がるから、乗り手の上体は前方へ投げ出されて馬の首に覆い被さるようになる。馬が真っ直ぐ進んでくれれば、首にしがみついて回復できることもあるが、大体は左右にも急激な動きをするので、横にずれて首に抱きつく形になる。馬が姿勢を戻して沈んだ馬体を持ち上げると、しがみついておれずに、背中から地面にドッスンする。

 しかし、下側の絵のように背筋を伸ばして、肩を後ろ気味に乗っていると、馬が躓いた瞬間に引き倒されにくい。この絵のように、ここでグッと耐えれば、そのあと馬が体勢を戻して背中が通常の高さに持ち上がるときに馬の首にしがみつくような必要が無い。

 前屈みは、本当に悪い姿勢。簡単に落ちたくなければ、絶対に前屈みになってはいけない

・その他
 鐙革が切れる、鐙が壊れる、腹帯が緩み鞍がずれる、手綱が切れる、などなどもあり得て、それが落馬につながることもある。安定して跨っていられないと、馬がちょっと躓いてよろけただけで落ちてしまう。


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 Youtubeには沢山の落馬ムービーがアップされている。その大部分は障害飛越での落馬だが、飛越に無関係な落馬も多くアップされている。それらの騎乗者の姿勢パタンを調べると、だいたいが同じ姿勢なのが判る。もっとも落馬するんだから、所詮は似たような恰好で落ちるので、同じ姿勢なのは当たり前だが。。。

・膝上がり

 落ちるかもと感じて、身を守るために体を丸めようとする。このため、膝を挙げて背が丸まり気味になり、体の重心が高い位置になる。
 この状態で急加速、急旋回などで横Gが掛かるとあっさりと転げ落ちる。

 特に、この絵のように拳が高い位置に上がると、馬はバタツキだして危ない走り方になって、安定して乗っていられなくなる。拳を低い位置に置かないと馬を落ち着かせることができない。

・猫背踵上がり

 これも身を守るために背を丸め、体を縮めようとして膝が曲がり、踵が持ち上がって前につんのめる。

 この姿勢で馬が前後左右に急動作すると、そのまま前にころりと落ちる。

 それにこんな姿勢は、馬を襲った肉食獣そっくり、ますます馬をパニックにするかも知れない。

・ずっこけ

 馬に跳ねあげられて落ちてきたときに鞍から大きく外れて着地。あるいは、野鳥などが急に脇から飛び出して驚いた馬が横っ飛び、乗り手は大きく鞍から横ズレ。

 落ちずにしがみつけることもあるが、多くの場合、落ちるのは時間の問題。運がよければ、鞍の正しい位置に這い上がれるが、そのためには、馬が暴れないなど馬の協力が必要。しかし、背中にこんな変な荷重をされたら、たいていの馬は肉食獣に襲われたかと勘違いして、パニックになるから、馬の協力は期待薄。


 RRでは、次のような面白いことを言っている。

 「頻繁に下を見るライダーは、落馬したときに着地する場所が柔らかいかどうかを、無意識にチェクしているのでしょう。下を見れば見るほど注意がそれ、バランスが崩れ、落馬して地面にぶつかる可能性はかえって高まります」と。


 Youtubeには落馬ばかりでなく、落ちそうになったが落ちなかった映像も少ないがアップされている。このうちかなりの割合のものが、膝がきちっと下がっており騎座が深いように見える。

・足まっすぐ下げ深い騎座だと落ちにくい

 脚を真下に下げるぐらい膝を下げて、決して背を丸めない。
 
 これで脚で馬体をしっかり保持できるので、多少の横方向のGが掛かっても耐えられるようだ。

 この姿勢でしばらく耐えていると、馬の背にも無用な衝撃をあたえることは無いらしく、馬も落ち着いてくる。落ちずに済んだ人は多くがこの姿勢のおかげで助かっている。

 しっかり脚をさげて馬腹に添えておくことで、馬に「ああ、(肉食獣に襲われたのでなく)人が乗っていたんだ」と思い出させることができるのかもしれない。

傾いたのと反対側の内股で鞍にしがみつく
 例えば、上体が鞍から大きく右に傾いて右に落ちそうになったときに、反対側の左の膝を曲げて、脹ら脛を鞍に引っかけてしがみつこうとはしないほうが良い。脹ら脛でしがみつくと拍車が強く入ってしまったりする。

 左の脹ら脛はまっすぐ下に下げて、左の内股を鞍の鞍壺の左側部分に引っかけて右に落ちようとする力に対抗する。鞍に粘り着く力は内股部分の方が大きい。

 地上のしっかりした(横倒しになる心配のない)台に鞍を置いて、これに跨がって上体を鞍から転げ落ちるほど傾けて、反対側の内股で鞍にしがみつく練習をしておくと、実際に馬上から落ちそうになっても頑張れる粘りが身につくように感じる。


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 「こうやれば落ちてもケガをしない」という方法があっても、落ちるときにその方法を実践する余裕などない。

 馬といっしょに転んだことがあるが、そのときゴロンと一回転して馬が自分の体の上を転がっていったのか、単に放り出されただけなのか判らなかった。背中が地面についた感触、仰向けになった目の前をまっ黒な巨大な物体が通り過ぎた感じ、圧迫感から、馬が自分の上を転がったように思うのだが、本当にそうか?と言われると、強い胸の痛みがあるだけで肋骨も折れていなかったから確信がない。そのくらい、一瞬の出来事。そんなときに、こうやりゃ大丈夫という方法を実践することは、よほど訓練していない限り無理。

 ここでの話は、落ちた後、手綱は掴んでいた方が良いかのか、放してしまった方が良いのかというもの。

 「落ちるときには手綱を掴んでいるべきだ、なぜなら手綱を掴んでいることにより頭から落ちることを防止できる」そうだが、落ちるときは本能的に何かにしがみ付くので、だいたいの人は手綱はしっかり掴んでいる。

 で、問題は落ちた後の話。先生に「落ちた後、自分は地面に転がってしまっているようなとき、どうしたらよいですか?」と聞くと、それは「すぐに手綱を放せ」と言う。以前外乗で落ちたとき、落ちて這いつくばっている私を見てパニックになった馬は恐怖のあまり全力で後退、手綱にしがみついていた私は立ち上がることもできず地面を散々引き摺られてひどい目にあったことがある。引きずられるのはましな方で、馬に蹴られたり、踏まれたりするかもしれない。だから一刻も早く馬を自分から離すために「手綱は放せ」という。

 手綱を放してしまったら後はどうなるか?馬が暴走をしたりすれば、馬場内で部班で運動しているときなどは、他の馬(人)に大迷惑を掛けることになる。単独の外乗だとだれにも迷惑はかからないが、馬が空身で戻ってきたりしたら大騒ぎになる。実はこれが心配で手綱にしがみ付いていたのだった。どこで落ちたか判らないのだから探しに来るのも大変。しかし、こんな心配をするよりも、まずわが身の安全確保ということで、「手に負えないときはすぐに放せ」と言う。

 ところで落ちた後、慌てて馬を捕まえに行くのも危ない。Youtubeに落されたあと、馬を抑えようと近づいて蹴られた映像がある(こちらの動画の4:05あたり)。人を落したあと馬は少なからずパニックになっているから、慌てて近づくのは危険。

 補足: 単騎外乗の途中で落し物に気が付いて、落としたと思われるあたりを馬上から探したが見つからない。馬から降りて歩いて探そうと馬を近くの木につないで探したが見つからない。あきらめて馬をつないだところに戻ると、「えーっ!!」馬がいない。空身で馬房にもどっていたりしたら、どんな大騒ぎになっていることか。慌てて戻ろうとすると、ほんの数十m先で何事も無かったかのようにのんきに草を食べている!これから類推すると野外で落ちて手綱を放しても、馬は馬房へ戻らず道草を食っていてくれそうだ。でも、馬だからなぁ、一直線に馬房に戻られても文句は言えない。どんな振る舞いをするか一頭一頭違っているので、この場合はこうという公式が当てはまらないところが悩ましいところ。

 補足: Youtubeを見ていたら「どうやって馬と転ぶか」という落馬練習のビデオがあった。馬が前足を折りたたむように転んだ、あるいは、障碍直前で急停止したような状況を機械を使ってシミュレーション。プロの騎手やセミプロをこれに乗せて怪我をしない受け身の取り方を訓練している。とても面白い映像だと思う。こちらからどうぞ。


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 落馬は落ちた人に肉体的(怪我)、心理的(恐怖心)後遺症を残すとともに、落した馬にも後遺症を残す

まずは、落とした馬の後遺症。

 臆病な馬が、なにかにビビッて人を落とす。人が素直に落ちればまだ良いが、だいたいは落ちまいと悪あがきをして、馬に強い恐怖感を与え、馬はますますパニックになる。

 馬は非常に記憶力の良い動物で、特に嫌な事はとてもよく覚える。このためあるところで人を落とすと、そこで味わった嫌な事から同じ場所でビビッてしまう。また、乗り手の「またここで振り落とされるのではないか」という不安感が馬に伝わるのか、同じところで同じようにパニックになったりする。

 さて、ある乗馬クラブでビジターで乗せてもらった。馬場のある場所で突然馬が飛び跳ね(たのかどうかさえ判らない瞬時に)落ちた。背中からもろに地面にたたきつけられ、あまりの衝撃にしばらく動けない。かろうじて四つん這いになれたが、背骨から腰のあたりに受けた衝撃で下半身に力が入らず立ち上がれない。1-2分はこうしてみじめに馬場に這いつくばっていただろうか。

 で、インストラクタ(小さいクラブだったから、「インストラクタ = オーナー」)は何をしたか?

 最初に「だいじょうぶですかー」と声を掛けてくれたが、這いつくばっている私を尻目に、私を落とした馬に乗って馬場をぐるぐる回っていたのだった。つまり、落とした馬に「この場所はそんなにビビる必要のない場所だよ、ほら、なんともないだろう」と教えていたのだ。トラウマ(馬の)の除去作業(調教)をしていたわけ。これをやっておかないと他の客を乗せたときに、同じところで同じことをやるかもしれない。もしそうなったら、初心者にその馬を使えなくなってしまう。

 「客が怪我をしているかもしれないのにそれを放っておいて馬の手入れとは何事か」と、とても不愉快だった。が、しかし、私はまた来るかどうか不明のビジターで、来なくても商売に差し支えはない。一方、馬はこれからも商売には必須で、これが初心者に使えなくなっては一大事。私は、馬から落ちた可哀そうな人ではなくて、商売道具を壊した(トラウマを植え付けた可能性のある)とんでもない奴、だったのだろう。

 私は、「落馬は(人馬転などは別として)、落ちた人が怪我をするだけ」と思っていたが、馬から落ちると「その馬を壊す」ということをここで初めて認識した。おまけにオーナーからみると、あんなんで落ちて!!落ちないようにもっとなんとかできたろうに!という状況だったらしいので、よけい乗り手に対して腹がたったのかも。まあ、さすがに、帰り際には「あれは乗り手に問題があった訳ではありませんよ。」と精一杯のフォローアップをしてくれた。でもねぇー。。。。。

 落された人の後遺症については、常識的ありふれたことしか話題がない。「落ちた後乗るのが怖くなった、どうしたらいいでしょう」というような相談事がWebに沢山あるので、そちらをご覧頂くのがよいかも、、、
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 転倒や、障害飛越でタイミングを誤り空中へ放り出される、というような場合を除いて、馬から落ちるいろいろなケースを見ると、馬自身が感じる恐怖・違和感・痛みなどから逃げたいとパニックになって人を落すような動きをしていることが多い。だから、馬に恐怖や痛みを与えず「この人が乗っている分には、自分は安心・安全だ」と思わせる馬の信頼を獲得できれば、馬がパニックになって落される確率はゼロに近づく、 というようなことを以前書いた。しかし、これでは馬の信頼を得るにはほど遠い初心者には何の助けにもならない。

 信頼を獲得するというような高度なレベルの話でなく、身体操作レベルで落馬防止ができることもある。

 それは、予兆の段階で手綱を強く(ただしガツンと唐突にではなく、ジワッと)控えて暴れさせないこと。何度か落とされると(勘の良い人なら落とされなくても判るように思うが)馬が人を落とすような動きをする前には、予兆があることが判る。馬も、跳びはねようとすれば、事前に溜をつくらないと普通に運動している状態から、溜なしで跳びはねることはできない。だから、乗っている人が落とされてしまうような動きをする前には、グッと肩が沈んだり、片一方の前肢を不自然に突っ張ったり(急旋回の予兆)、頭を不意に下げたり、あるいは、上げたり、横に振ったりする。この段階で、「ほら、そんなことしちゃあダメだよ」とジワッと手綱を控えて、馬の動きを牽制してやると危険な動きをさせずに済む。

 さらには、こういう不穏な動きがある前から、風が強くて砂塵がおそってきた、柵に干してあるタオルやゼッケンなどが激しくはためいている、相性の悪い馬が近くに来た、ちょっと前になぜだかビビったところに近づいた、犬が吠えながら近づいてきた、大工仕事の音がガンガン聞こえる厩舎の近くを通る、見慣れないものの近くを通る、などといった場所では、馬に「ほーら、大丈夫だよ」とか声を掛けて意識を乗り手に向けさせ、ビビる可能性のあるものから馬の意識をそらせてやる。そして、危険な動きをすることに対して、手綱をいつでも強く控えることができるように体勢を作っておく。拍車をいやがって暴れそうなときに、再度拍車を使う前にも、手綱を強く控えることができるように体勢を作っておく。前屈みになっていると、手綱を強く控えることができないので、絶対に前屈みになっていてはいけない。

 これで、落馬してしまうような危険な動きを、かなり防止することができる。馬が実際に危ない動きを始めてしまってからでは、馬を止めることは難しいので、「あれっ、なんか不穏」という段階で強く手綱を控えて馬を抑えることが大切。これをボケッとしていると、気がついたときには尻は鞍から大きくはねとばされ、どうしようもなくなっていることが多い。

 ただし、瞬間に抑えなきゃあいけないんだ、今か?今か?と緊張していると、その緊張が馬にも緊張をもたらし、馬を不安に陥れるので、あくまでもゆったり乗る。「ほらあ、大丈夫だから、ゆっくり走って」などと声を掛けてみるのも、自分(乗り手)が本来馬をリードする立場にあるという認識ができて、自分の不安と緊張を取り去るのに有効。

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