馬に乗れば、人が歩くのに難渋する深い草原でも楽に行ける。しかも、人が歩いたり走ったりするよりも何倍も速く。坂道もぐんぐん登れて、高いところへも労せず行ける。こういう馬に乗るメリットを体感できるのが外乗。
しかし、馬で走り回っても他人に迷惑をかけないというと相当な原野、山中、海岸しかないから、外乗を楽しむには、かなり遠くに行かなければならないのがつらいところ。しかし、その分 景色ときれいな空気は満喫できる。
小鳥の声を聞きながら自然の中でゆったりと乗れば心身ともにリフレッシュ。爽快に風をきって駆ければ、これもまた素晴らしく、、、なかなか機会が無いが やってみれば、まずやみつきになる。自然も美しい春秋は特にお勧め。
外乗を楽しむ | |
外乗の形態と予約のポイント | 外乗の形態と注意事項 |
外乗技術と馬場技術 | 裸馬外乗 |
完全規制型外乗コースが人目に触れ易い場合、馬糞(ボロ)を施設側で回収しなければいけない。このため、ボロを回収するためにも案内が付くことがあるので、まったく自分だけで自由に乗れるコースは非常に限られている。乗馬クラブ主催の外乗会などでは自由に乗れることが多い。
勝手に走ったりできないが、初心者にはもっとも安全な形態。初めてでも安心。
(1)必ず先導馬が付く。
(2)進む順番なども決められ、一列になって進む。追い越しなども禁止。先導の係りの馬の横に並んでもダメ。
(3)歩様も自由には選べず、速歩や駈歩はコースのどこでやるか決まっている。
部分規制型
自由に乗れる牧場(草原)あるいは海岸などまでは行列で行って、牧場(草原)や海岸についたら自由にという場合が一般的。
(1)先導馬ないし、先導のバイクなどが付く。
(2)進む順番なども固定だが、「自由に乗っていいですよ」などと自由に乗れるところが用意されている。
(3)歩様は決まっているが、自由に乗れるところでは好きな歩様で乗れる。
完全自由型
馬を時間貸しするような形態。駈歩なども自由にできるし、気ままに乗りたい人にはとても楽しめる形態。
(1)先導馬は付かない。(道が判りにくい場合は、途中まで先導車やバイクでの案内あり。)
(2)コースはおおむね決まっているが、脇道にはいったり、同じところを巡り回ったりと好きにできる。当然リスクは全部自分で負う。
ビジター受け入れの可否ビジターで乗れるかどうか?ほとんどの外乗コースはビジターもOKだが、まれに外乗は会員だけというクラブがある。先導の有無と自由騎乗の可否先導馬は付くのか?、必ず先導馬の後をついてゆく形式で自由に走らせたりして乗ることはできないのか/できるのか?用意されているコースの概要
先導馬が付くことが普通なので、自由に乗りたい場合は「ガイドなしに自由に走らせたりして乗りたいのですが、ガイドなしで乗れますか?」と露骨に訊くのがよい。
逆に、初めてで不安な場合は、「初めてですけど、先導は付きますね」と確認。
要は自由気ままに乗れるのか、ひたすらガイドのあとをついて歩くだけなのかを確認。上と関連するが、所定のコースを一巡りしたら終了なのか、所定の時間内であればコース(道順)不問なのか?人数
時間制の場合は最長どのくらいの時間までOKなのか?
コースは農道、山道、原野、海岸(海中も込み?)、どのようなところなのか?海中深く乗り入れて良いなら、乗り手も水着。一人だとダメな場合もある。一人の場合は「一人ですが、乗れますね?」と確認。乗馬技術レベル
複数人の場合も念のため「○人ですが、乗れますね」と確認。
一人ではダメでも、たまたま同じコースに出る客がいるから、一緒にならOKということもある。技術レベルについては経験鞍数をいうよりも外乗の経験(初めて、あるいは、どこそこで乗ったことがある)や、駈歩をしたい/怖いから駈歩はしたくない、などを伝える。使う鞍の種別
自分に合った馬を用意してもらうために、正確に伝える。
最初に馬場で乗せてみて客のレベルを見定めてから適当な馬を決める施設もある。普段乗りなれた鞍が良いので、使用する鞍の希望を伝える。乗る馬の種類
ウェスタンとブリティッシュのどちらか一方しか用意していない施設もあるが、こちらの希望に応じた鞍を付けてくれる施設もある。馬はだいたいが施設側のお仕着せだが、「どんな馬がよいですか」と聞かれることもある。希望の馬種があれば伝えても良いが、「大人しい馬」「反撞の小さい馬」「多少鈍いくらいの馬」などと希望を伝える方が、施設側が馬を選ぶのに役に立つ。施設で借りられる装備の有無
なんどか乗ってなじみになれば、あの馬に乗りたいと個別の馬を名前で指定できることもある。ヘルメットやブーツを持っていない場合などは、レンタルできるかどうかを確認。保険の有無
装備の予約も必要なら、しておく。障害保健など当日現地で加入可能かなど確認。特殊な依頼裸馬で乗りたいなど、特殊な希望があれば可能かどうか、確認。金額の確認
希望は遠慮なく伝える。馬運車で馬を外乗場所まで運ぶなどの場合、人数によって一人当たり費用が変わったりする。レンタル装備や、保険なども含めて個々の費目ごとの費用と総額を確認。
筑波の麓で、田のあぜ道を駈足
ここは完全規制型だと思うが、他に客が居なかったこともあり、駈足どうぞというところではほぼ自由に、といっても一本道のあぜ道だから、あちこち走り回るという訳にはいかないが、楽しめた。速度は自由で、行けるなら先導の三輪バギーも追い抜いてもいいですよ、ということで、追い抜かさせてもらって、前に誰もいない状態で思い切り走ることができて、爽快この上なかった。
あまり強い鞭は入れられたことがないらしく、思い切り鞭を入れたら、脇に一歩イレギュラーな動きをしたが、高速で走っているところだったので、そんなに急加速では曲がれないので「オッと」という程度で問題は無し。
これで速度は40km/時程度だったらしいから、競馬のスパート時の速さというのは恐ろしいものだ。
外乗は、大変面白く楽しめるが、場内とは環境も違うので、それなりにリスクがある。馬場内と違って、下は固いアスファルトだったり岩だったりもするから、外乗にヘルメットは必須。
しかし、「場外だから危ない、場内だから安全」と言い切れるものでもない。リスクがあるからと外乗に出ないとすれば、大変もったいない。それに、先導馬についてゆくスタイルの外乗ならかなり安全。「駈歩はどうも、、」とか言っておけば、みんなで暴れん坊将軍をしましょうということにはならない。
外乗の形態には、大きく分けて、(1)みんなで隊列を組んで先導馬について行く形態、その対極として、(2)自分一人で(先導馬も、後続馬もなく単騎で)行く形態の二通りがある。単騎での外乗は日本では、できるところは少ないが、探せばあるかも知れない。
注意点 | (1)先導馬付き・隊列を組んで | (2)単騎 |
経路の選択 | 先導馬が通った経路は安全であり、馬はおおむね、前の馬に付いて歩くので、経路選択に悩む必要はない。先導馬が通った通りの経路を歩かせればよい。 | 馬が脚を滑らせたり、躓いたり、穴に足を突っ込んだりしないように、歩行を妨げる箇所を避けて馬を誘導する必要がある。 |
暴走などへの対策 | よほどの事がないかぎり、乗った馬が勝手に暴走することはない。ただし、先導馬に驚いた野鳥等が、先導馬が通り過ぎた後で飛び出すこともあるので、常に馬の不規則な動きには警戒しておくことが必要。 | 野鳥・獣の飛び出し等で馬が横っ飛びしたり、暴走を始めたりする可能性は大きいので、決して漫然と乗っていてはいけない。 深い草むらの中からは動物が飛び出してくる可能性に注意しておくこと。 |
物見への対応 | 先導馬が物見をせずに進めば、乗っている馬も物見をすることなく進んでくれることがほとんど。 先導馬が前に進んでいるのに、進むのを拒否されることはまず無い。もし、そうなっても先導の係が、対応してくれる。 |
見慣れないもの、以前に嫌な思いをしたところ、恐怖心を与えるようなものがあるところで全く動かなくなったり、後退りしかしなくなったりする可能性がある。 これを無理に進めようとすると危険な場合があるが、我が儘で乗り手の言うことを聞かない場合は、鞭などで厳しく叱って進ませないと、我が儘が通ると思われてしまう。 |
隊列を保つ | 前の馬に近づきすぎないように注意。外乗に使う馬は、多少近づいたからと言って蹴ったりする馬は使わないはずだが、絶対大丈夫という訳ではないから、前の馬とは2馬身以上は空けるようにした方が良い。 | 単騎だから他の馬に注意する必要はないが、歩いている人、自転車、自動車などには近づいてはいけない。 |
一般 | どのような場合も、落ち着いた自信溢れる態度で乗ること。馬が怖がってバタつくのにつられて乗り手が慌てたりすると、馬はますます怖がりバタつく。乗り手が安心している顔を見せて、落ち着けと声を掛けてなだめれば、馬も落ち着く。 |
外乗ではやはり暴走が一番心配だが、万一暴走されたら 「絶対に疲れて停まるはず」と信じて、落ちないことに専念。6-700mも走れば必ずスピードは落ちる。輪乗りに持ち込んでだんだんと輪を小さくして止めろというが林道など狭い道を通る外乗では輪乗りに持ち込むことはできない。
途中にちょっとした邪魔物や水溜りなどがあったら障害を跳ぶようにジャンプされてしまう可能性が高いので、そのようなものが前方に見えたらジャンプされても良いように体勢をつくっておく。
「馬は賢いから、車や他の馬、人などにぶつかることは避けるだろう」と考えてはダメ。バカなのか急には曲がれないのか、他の物にぶつかることがある(YouTubeに画像がいろいろアップされている)から、必ず回避するだろうと期待して乗っているとひどい眼にあう。馬は他の物体に体当たりすることがあると想定しておくべき。馬の体当たりの衝撃力を考えれば、昔の騎馬隊の突撃というのが大変威力があったのも解るような気がする。
「馬場の中で他人の乗っていた馬が暴走した。暴走馬の進路に自分の馬を入れて暴走していた馬を止めた。しかし、暴走馬に乗っていた人に、礼を言われるどころか、睨まれた」、という話が2chにある。暴走馬を止めるためにその進路に自分の馬をいれると、暴走馬は自分の馬に体当たりしてくる可能性もある。馬と馬がぶつかれば乗っている人も馬もケガをする。暴走するだけなら、落ちない限り、ケガはしない。運よくとまってくれたから良いようなものの、暴走馬の進路に自分の馬を入れて、暴走馬を止めるというのは危険行為。
「外乗で馬に乗る技術と、馬場で馬に乗る技術に本質的な違いはない」と以前書いたが、野外騎乗の専門書(昔の騎兵の馬術やハンティングの本など)を見ると、馬場馬術と野外騎乗はまったく別ものだという記述が多い。騎乗姿勢の安定や脚や手綱による扶助など基本は同じだと思うのだが、馬場馬術の細かい扶助は、野外騎乗では無用のものかもしれない。
けれども、そこら辺の野外で思うように馬を乗り回して楽しみたい、という程度の外乗技術なら、馬場馬術として教えてもらう「馬に関する知識、騎乗姿勢、手綱操作、脚や体重による扶助」などは野外でも充分に役に立つ。
外乗の楽しみは、大自然と一体になって馬を駆る、あるいは、馬上から自然の景観を楽しむというところにある。だから、折れ曲がったり凸凹した自然路を人を乗せて安全に進むことが最重要で、馬の脚の動きを細かくコントロールして前肢の踏み跡を後肢に踏ませるなど意味はない。外乗で大事なことは、馬に特定の姿勢(馬場馬術で高得点を得るために必須といわれているような姿勢)を取らせることでなくて、馬自身が自分の判断で自分の能力が最大限発揮できるように導くことだと言う。
非常にいい加減な把握だが、 外乗技術 = 馬場技術 ー 細かい動作のコントロール技術 + 急傾斜やデコボコ道での乗馬技術 と言えるかも。これにエンデュランスなどでは馬の疲れ具合や体調を観察・把握する技術が加わる。「急傾斜やデコボコ道での乗馬技術」といってもそんなに難しいものでなく、例えば、急な登り坂では後ろにずり落ちないように体を十分前方に預けるとか、急な下りでは手綱を充分譲って馬が足元をしっかり見ることができるようにしてやるといった程度のこと。ガイド付きで外乗に行けば、この程度のことは場面場面に応じてガイドが注意してくれる。
外乗技術を専門にレッスンしてくれるところはまず無いから、外乗の体験回数を積んで経験的に習得してゆくしかない。ただし、やみくもに経験だけによるよりも、ガイドの話や体験者のいろいろな話を聞いて、馬はそういう環境(悪路や野鳥の飛び出しなど)でどのように反応するかなどを知識として知っておくことは役に立つ。
裸馬での外乗は「(自然と一体になる)究極の外乗」。外乗が自然に触れる乗馬なら、鞍無しで馬に直接跨る裸馬で外乗に出ることは、より一層自然と一体になれるように思う。鞍が無いから自然だというのは短絡的だが、そんな感じがする。やってみれば病み付きになる。
ただ残念なことに、外乗はやっていても裸馬でということだと「いいですよ」というところは限られている。オーナーと親しくなったりすれば「OK」が出るかもしれない。ダメモトで頼んでみよう。ただし、飛乗れないと、落ちたり、下馬したあと、再び乗ることができなくなってしまうので、飛乗れるようになっていることが必須。マッ平らなところで飛乗れなくても、ちょっとした段差利用で飛乗れればOK。
三浦海岸には「海馬」といって裸馬に乗って海に入れるコースがある。当然乗り手も水着。海岸を裸馬で爆走といいうわけにはいかないが、面白いので試して見るとよい。
紅葉もいいが、緑の中を駆けるのは最高。 爽快というのはこういうときのためにある言葉か。 |
緑の中の駈歩は心地よい。とくにこの馬のように反憧が少なく、ゆったり走ってくれると一層快適。 |
H先生のクラブの外乗コース。山の畑の脇やヘリポートの脇を通って進む。林間の尾根道、アップダウンが結構ある。ここは完全自由型、先導も付かず、思うままに乗れる。 |
新緑の中をゆったり常歩で進む裸馬外乗はとてもさわやか、最高に気分が良い。 |